暗号通貨取所FTXの幹部らが「政治献金」に意欲を燃やす理由

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米下院でバーモント州唯一の議席に立候補している民主党のベッカ・バリント上院議員は、予備選挙の1か月前に予想外の献金を受けた。暗号取引所FTXの幹部で、エンジニアリング部門を統括する26歳のニシャド・シン(Nishad Singh)がPAC(政治行動委員会)を介して、110万ドル(約1億5000万円)を寄付したのだ。

バリントは、今月初めに実施された予備選挙で勝利しており、民主党色が強いバーモント州で11月の総選挙でも勝利することが予想されている。彼女は、シンからの寄付がなくても議席を得られるはずだ。

しかし、FTXでは政治献金が頻繁に行われている。米連邦選挙委員会のデータベースによると、過去2年間でFTXの社員は250ドルから数百万ドルまで、300件以上の個人献金を行っている。

暗号通貨の背景にある反体制的な価値観は、リバタリアン思想家たちを惹きつけている。一方で、暗号通貨業界は若い世代が圧倒的多数を占めており、彼らの多くは民主党を支持している。この結果、暗号通貨業界が支持する政党は、どちらか1つに定まっている訳ではない。FTXのCEOで、30歳の若きビリオネアであるサム・バンクマンフリードは、「効果的利他主義(Effective Altruism)」の信奉者だ。これは、最良の結果をもたらすことを基準に意思決定を行うという考え方で、彼にとって、最大の政治的関心時はパンデミックの予防だ。

選挙運動向けに暗号通貨による献金を受け付けるツールを提供しているEngage LabsのCEO、Martin Dobelleは、次のように述べている。「彼らは、これまでにない新しい世代であり、新しいタイプの集団だ。従来は見られなかったイデオロギーを持つ彼らが、政治に関与し始めている。彼らは、経済面ではリバタリアンだが、社会的には非常に進歩的であり、1つの政党にくくることのできない人々が混在している」

バンクマンフリードは大統領選に10億ドル


バンクマンフリードは、FTXで最大の献金を行っている。彼は、パンデミック防止を重点政策として掲げる候補者の当選を目指すPACの「Protect Our Future」に1000万ドルを寄付している。バンクマンフリードは、Pushkin Industriesのポッドキャストで、2024年の米大統領選挙に1億〜10億ドルを費やす考えを示した。彼の献金先は民主党が多いが、共和党にも献金をしている。
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編集=上田裕資

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