トンガの噴火以前の地震による最大の津波は、2011年の東日本大震災および1960年のチリ大地震の後に記録されたもので、初期の高さは10メートルだった。これらは陸地の近くで起きたためにより破壊的であり、波の幅も広かった。トンガの火山噴火で放出されたエネルギーはマグニチュード8.4の地震あるいはTNT火薬61メガトンに相当し、歴史上最強の水素爆弾よりも大きい。
本研究は大気圧の変化と水位振動を記録した海洋観測データを解析し、実世界のデータで検証されたコンピュータシミュレーションを組み合わせることで実施された。
研究チームはこの津波の特異な点として、波が起きた原因が、火山噴火によって排除された水だけでなく、地球を複数回周回した強大な大気波にもよることを挙げている。この「二重機構」が2つの部分からなる津波を発生させた。大気波によって最初の海洋波が作られた1時間以上後に、噴火による水の排除で作られた第2の大波が続いた。
この組み合わせは、津波警報センターが最初の波を検出しなかったことを意味している。なぜなら、システムは大気波ではなく水の変異に基づいて津波を検出するようにプログラムされているからだ。
1月に起きたこの現象は、地球を周回するほど強力な津波という極めて稀なものであり、日本や米国西海岸から北太平洋、地中海海岸にいたるまで全世界の大洋、大海で記録された。
国際津波委員会事務総長でバース大学建築・都市工学部上級講師のムハンマド・ハイダルザデ博士は日本、ニュージーランド、英国およびクロアチアの共同研究者とともにこの論文を書いた。同博士によると、このトンガの津波は、私たちが火山噴火による津波に対する準備を進め、原因と兆候の理解を深めるための注意喚起と受け止めるべきだと指摘した。
「トンガの津波は5人の命を奪い大規模な破壊を起こす悲惨な出来事でしたが、もしこの火山が人間社会の近くにあったら被害はいっそう大きかったでしょう。この火山はトンガの首都ヌクアロファから約70キロメートルの距離にあり、この距離が破壊力を著しく弱めました」
「これは巨大かつ独特な出来事であり、私たちが火山による津波を検出するシステムの改善に投資すべきであることを世界的に知らしめるものでした。現在のシステムは地震の監視に使用されているものより30年近く遅れています。私たちは火山による津波に対して準備不足なのです」
論文『Estimating the eruption-induced water displacement source of the 15 January 2022 Tonga volcanic tsunami from tsunami spectra and numerical modelling(2022年1月15日のトンガ火山による津波の原因となった火山が誘発した水の排出を津波スペクトルおよび数値モデリングを用いて推定する)』は、Ocean Engineering (2022)に掲載されている。
資料提供:ダニエル・ストルテ(バース大学)
(forbes.com 原文)