「リーダーというのは、歴史上、再現性がある。周りの人たちから見たら傍若無人に見えることが多いかもしれませんが」と言う深井に、日本人ビリオネアと歴史上の偉人を比較してもらった。
合理性の化身
日本人ビリオネアの顔ぶれを見てみると、歴史上の傑出したリーダーたちと似ている点を見てとることができます。歴史的に見れば、近代では、ものすごく合理性が重視されています。近代的な合理主義的な手法を重視した人物にフリードリヒ大王がいます。例えばファーストリテイリングの柳井正さんは彼に似た点がある。
大王は、プロイセンというすごく小さな国をその後のドイツ帝国のもとになるぐらいの強い国に押し上げた人物。徹底した合理主義を政治に持ち込みましたが、その合理性を最も強く要求したのは自分自身に対してでした。自身に厳しいが故に、周りからは「それで楽しいんですか?」と見えていたと思います。
会社のメリットを徹底させ、公私において意味のないことは絶対しないと言われる柳井さんも、「そうすべき」と課して高いパフォーマンスを出していらっしゃるように見えます。
もうひとり、日本電産の永守重信さんも合理性を重んじているように思います。ただ、永守さんの合理性は少し違って、春秋時代の越王勾践が実践したものに近いようですね。臥薪嘗胆という四字熟語の「嘗胆」の元になった人で、自分に何かを課して、それを達成することが得意な人です。
彼は、自分が設定した目標の大きさを忘れないために、嘗胆、つまりすごく苦い熊の肝をなめ続けるみたいな謎なことをしているんですけど、自分にとってつらいことをわざとやるわけです。過去に起きた悔しい出来事を忘れないために、自分にタスクを課し続けるというストイックさを実践、それを達成してしまう。ものすごく目的志向型の人だと。
永守さんは、明日の計画を20、30と手帳に書き込んで、それを時間通りに消化して一日を終えられるそうなので、そのストイックさは越王に通ずるところがあるのではないでしょうか。
もう少し若手の、楽天グループの三木谷浩史さんは織田信長を思わせます。大胆で思い切った人材登用が似ています。信長は一般に実力重視の成果主義というイメージがあり、明智光秀や豊臣秀吉を抜擢。人材を見いだし登用して、事業を拡大する。そこが三木谷さんに近いですね。付け加えると、若い頃のちょっとアウトローなエピソードも共通しているようです。
近代における成功者は、合理的な思考を持つ方が多いのですが、それを「ひらめき」でやっている印象を持つのが、ソフトバンクグループの孫正義さんです。僕から見ると、まさしくアレクサンドロス大王です。
彼は、マケドニアというものすごく辺境の国の王子だったんですけど、当時ペルシア帝国という世界最大の帝国を10年ぐらいで滅ぼしちゃうんです。世界史上の英雄といえば、アレクサンドロス大王です。非常に上昇欲求が強く、大きな夢を描き、自分が先頭を切って突き進んでいく。そういう点は、孫さんに似ていると思うんです。ただ、優秀すぎてついていくのは非常に大変ところもあるんですけどね。