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2022.09.03 18:00

COTEN深井龍之介が読み解く、日本のビリオネアランキング

日本を代表する経営者を歴史上の偉人に例えると(イラスト=フィリップ・ペライク )


バランス型と新世代


ほかの方々と全く違うリーダーが、ユニ・チャームの高原豪久さんですね。2代目でなければ、劉邦や劉備かなと思ったんですけど、2代目なのでエリザベス女王1世。強いリーダシップで引っ張っていくというよりは、周りを生かしていきますというタイプ。
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エリザベス1世は統治基盤を引き継いだ立場なのでまわりの貴族に強く出られないという前提条件があった。それで彼女なりに考えて6人ぐらい側近を付け、バランスを取りながら運営していく。「空気のようなリーダー」を自称する高原さんに似ていらっしゃると思うんです。劉邦や劉備でもいいんですけど、自分がすごいというよりは、部下がすごい。イイ感じで力が抜けているんです。だから周りからすると、「この人を助けないと」という感覚になるんですよ。愛され型ですね。

普通、自分にとって聞こえがいいことを言う部下だけを集めたりしがちですよね。そうするとダメな組織になると思うんですけど、劉備で言えば、自分に対してめちゃくちゃ失礼な人も優秀だったらちゃんと登用して生かしている。部下からすると、大切なときに話を聞いてくれて、誰かに偏重したりしないので働きやすいんです。社員の話を聞き、行動を促すといわれている高原さんに近いですよね。

次世代の経営者では、若いときから活躍されているサイバーエージェントの藤田晋さんが、ナポレオンというイメージです。当時ITってとても新しい分野だったわけですよね。新しい時代に新しい分野で若い世代の支持を集めながら成長した。フランス革命という動乱期に、天才的な戦術で同世代の人たちから憧れられ、皇帝まで登っていったナポレオンに通じるところところがあると思います。
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これからのリーダーというのは、ただビジネスが得意なだけでは、務まらなくなると思います。社会における企業家の役割に公共性が求められるようになり、自然な流れとしてビリオネアもモラリティ(道徳)のある振る舞いや投資を求められるようになっていくでしょう。モラリティの欠如はネットを通し人々に逐次チェックされ、ビジネスに打撃を与える可能性が今後ますます大きくなるだろうと思います。

柳井 正→フリードリヒ大王



君主制の時代というのは、王様に気に入られたら出世できたりするけれど、フリードリヒは絶対にそうしない。気に入った人はすごく仲よくするんだけど、政治的に取り立てたりは絶対にしない。パフォーマンスを出せるか出せないかで決めるし、それをものすごくダイレクトに本人に言う。プライベートとビジネスを厳格に分け、意味のないことは絶対にしないといわれる柳井さんはこの歴史の色を濃厚に受け継いでいると感じます。(深井)
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文=中沢弘子 写真=竹井俊晴 イラスト=フィリップ・ペライク

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