テクノロジー&サイエンス部門で受賞した齋藤優太(24)は、2020年に米イェール大学助教授の成田悠輔とスタートアップ「半熟仮想」を立ち上げた。現在、齋藤は同社の共同創業者兼科学統括を務めながら、コーネル大学大学院で反実仮想学習やランキングの公平性に関する研究を行っている。
学術研究者とソフトウェア開発者の二足のわらじを履く齋藤優太は、世界的に見てもまれな存在だ。
齋藤が取り組む分野は、反実仮想機械学習。通常の機械学習は、正解がすべて判明しているデータから学習するが、反実仮想機械学習では、選択できたけれど実際には選択しなかったことの結果についても因果推論という手法で導き出し、より最適な答えを出す。世界的にもまだ新しく、日本国内ではまだ数えるほどしか研究者のいない分野だ。
きっかけは大学時代のアルバイトだ。
テック系の事業を展開するソニーの子会社で、忙しい社員の代わりに新しい技術分野を自由に探すことが仕事だった。齋藤はそこで初めて機械学習に触れ、どうせならそのなかで第一人者になれる新しい何かを探そうと、好奇心の赴くままに調べていった。そこで行き着いたのが反実仮想機械学習だ。
明らかに普通の機械学習よりも便利そうな技術であるにもかかわらず、それを専門とする人がほぼいないということに心は躍った。
現在は、似た研究に携わっていたイェール大学助教授の成田悠輔と半熟仮想を創業し、サイバーエージェントやZOZOなどの企業とビジネスでの実用を目指したソフトウェアの共同開発を行う。その一方で、自身はコーネル大学大学院の博士課程に進学し、学術研究にも取り組む。
技術の基礎を深め広げる学術研究と、実用化を目指す応用研究の携わることで、両者の橋渡しとなる役割も果たす。
2021年には、この技術を誰でも使えるようにとオープンソースのソフトウェアを開発し無償公開した。意思決定が絡む分野であれば何にでも有用で、特に個別化医療(患者それぞれの特性に合わせた治療)での活用が期待されている。
「二足のわらじを履くユニークなポジションを深めていきたい。いずれは、研究者として新しい分野をつくりたいという思いもあります」
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さいとう・ゆうた◎1998年生まれ。東京工業大学卒。コーネル大学コンピュータサイエンス専攻博士課程在学。2020年7月、半熟仮想を共同創業。