「Amazon Standard Identification Number」の略であるこの識別番号のなりたちについて、以下、1996年から1998年までアマゾンのソフトウェア・エンジニアを務めており、「ASIN」の当の開発者でもあるレベッカ・アレンが「inventlikeanowner.com」に寄稿した記事を翻訳転載で紹介する。
莫大な発行コスト。「ISBN」ではもう無理だ!
アマゾンの草創期(1994年~95年)、書籍販売サイトAmazon.comを全世界に公開(正式開設日は1995年7月16日)するのに必要なソフトウェアをすべて書いたのは、当時のCTOシェル・カファンとソフトウェア・エンジニアのポール・バートン・デイヴィスだった。
サイトが世界に向け公開される上で、販売している本(当時アマゾンで売られていたのは「本」のみだった)の書誌データをまとめたカタログをオンライン化するために、カタログ内の商品ごとに固有のインデックスが必要になった。そして、カタログの作成に使ったデータベースがインデックスにしていたのは「10桁のISBNコード」だったため、シェルとポールはISBNをキーとして使うことになった。
だがあいにく、米国内ではすでに恐ろしい数のISBNが使用されていた。シェルはすぐに気づいたが、遅すぎた。加えてISBNコードを発行するバウカー社は、多額の発行料を請求した。このコストは、少なくとも小規模の出版社や企業には痛手である。
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また、バウカー社が指定したすべてのルールを遵守しない出版社もいた。とりわけ小規模の出版社はコードを再利用したり、「最終桁はチェックデジット」というルールを無視し、「全桁を使って」数字を割り振ったりしていた。いわば、ISBNは無法地帯と言ってよかったのだ。
シェルは「ソフトウェアによるチェックデジットのチェック(これによって正式なISBNであることが確認できる)」を外した。それでも、キー値を10桁の数字に格納するコードベースで行き詰まることになることは避けられなかった。なぜなら、似たような制約を持つ別のデータベースにも、番号は格納されていたからである。
そんなわけで、カタログに書籍以外の商品、すなわちCD、DVD、電子機器などを加えようとしたとき、ISBN以外のコードが必要になったのは自然なことだった。以下、その理由を復習しよう。
(1)書籍以外の商品には、もともとISBNコードがついていない。
(2)前述のISBNの正式な供与エイジェンシーバウカー社からISBNコードを購入するには莫大なコストがかかる。
(3)ISBNのナンバリングロジックではアドレス可能なスペースに制限がありすぎ、アマゾンが販売しようとしている商品すべては到底カバーできない。