だが情報が氾濫しているにもかかわらず、あまり情報を受け取っている感覚はないのではないだろうか。それは、情報という干し草の山から洞察という針を探すようなものだが、干し草の山は大きくなる一方なのだ。まさに「情報に溺れながら、知恵は干上がる」という格言のような事態だ。
だが幸いなことに、世の通念とは異なり賢明さは高齢者だけのものではない。それは、学び、育てることのできる特性なのだ。賢明さは、私生活で地に足をつける必要があるときにも役立つ。もっと自分をコントロールしたいときに、燃え尽き症候群を回避させることができる。そして、よりインスピレーションに満ちた意思決定を支援することもできるのだ。
科学と哲学は賢明さに関わる5つの要素を見つけ出しており、これらを身につけることで、年齢に関係なく(より)賢明になることができる。
1. 自分の限界を認識する
最初の要素は、自分の知識の限界を認識し、自分がすべての答えを持っていないことを自分に言い聞かせることだ。定義上、人間の視点は自身の経験と立場によって制限される。自分にとってはまったく当たり前のことでも、他の人にとってはまったく違うことかもしれないのだ。こんな話を聞いたことがあるかもしれない、知的な謙虚さを実践できるかどうかが、真の賢明さの尺度なのだ。
また、新しい情報に出会ったときに、間違いを認めたり視点を変えたりできる姿勢も、賢明さの一部なのだ。人間はしばしば認知バイアスに引きずられるし、多くの時間やエネルギーを投資した行動方針または信念にこだわり続ける傾向があることをサンクコストの誤謬(サンクコスト効果)は示唆している。
また、確証バイアスによって、人間には自分がすでに信じていることと一致する情報をより容易に受け入れる傾向がみられる。このようなバイアスを意識して、意外な場所にバイアスがかかっていないかを探して欲しい。