6月15日に発表された0.75%の金利引き上げは、それまでのより緩やかな政策からの好ましい転換だった。FRBによるバランスシート縮小の決定は、正しい方向への新たな一歩だ。そして政策決定委員会は、「本委員会はインフレ目標を2%に戻すことを確約します」と正しい発言をした(金融政策は、FRBの理事7名と地域連邦準備銀行総裁12名中5名からなる連邦公開市場委員会によって実施される)。
しかし、そのインフレ予測と金融政策は、FRBが理解していないことを示している。彼らはインフレのダイナミクス、とりわけ金融政策がインフレに影響を与えるのに要する時間を誤解している。
供給問題は不定期に去来することから、FRBは「コアPCEインフレ」を監視している。これは食料とエネルギーを除いた個人消費支出の価格指標の変化のことだ。この指標が過去12カ月間に5%上昇した。今回の決定に合わせて公表された見通しによると、委員会は2022年のインフレ率(12月における前年同月との比較)を4.3%と予測している。
これはこれまでの現状と一致している。しかし、委員会による来年、2023年における予測の中央値(見通しはFRBの理事全員と地域連邦準備銀行総裁12名全員が提出する。本稿で引用した数値はその中央値である)はわずか2.7%と大きく減速している。そしてこれは、食料とエネルギーの価格を除外した数値だ。
もしコア・インフレ率がそれほど急激に上昇し、その後急激に下降するのであれば、そこにはウクライナ戦争以上の理由が必要だ。FRBが理解していないのはそこだ。彼らは2020年と2021年に、過剰な経済刺激を与え、刺激は2022年4月まで続けられた。インフレはすぐには上昇しなかったが、それは金融政策のタイムラグに関する多くの研究結果と一致している。
大まかな経験則によれば、原因(金融政策)から結果(インフレ率の変化)までのタイムラグはおよそ2年である。FRBが使用している米経済モデルのタイムラグはわずか1年だ(実際のタイムラグは1年や2年よりもずっと複雑である)。