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2022.06.13

「大転職時代」を迎えたアメリカ 人材不足と賃金インフレの行方

Spencer Platt / Getty Images

ニューヨークのマンハッタンでは、めっきりマスクをして歩いている人が減り、観光客も増えてきた。これまでのような新型コロナウイルスに対する神経質な警戒感もかなり緩んできている。

外出時はマスクをして、家に戻ると必ず手も消毒する日々を続けていたにもかかわらず、私もこの4月に新型コロナウイルスに感染した。幸いなことに軽症で済んだが、全米では成人の56%が既に感染したとのニュースもあり、そのなかには私のような無料で配られた自己検査キットで陽性を確認して、陰性になるまで自己療養した人間は含まれていない。

5月には、ニューヨーク州の新型コロナウイルスの感染者数は、再び全米の州のなかでトップとなった。その感染エリアは、カナダ国境近くの州全体にまで拡大した。特にニューヨーク市では若者を中心として前月と比べて34%も感染者が増加した。

とはいえ、死亡率が上昇していないので、このところコロナ禍以前のごく普通の生活に戻りつつあり、コンサートもジャパン・パレードやエイズ・ウォークなどいろいろなパレードも再開されている。お昼時のランチを求める列も、以前より人が並んでいるのを目にするようになった。

インフレの状況が見えるアメリカ経済


5月22日(現地時間)に地下鉄でゴールドマンサックスの社員が撃たれて死亡する事件が起きたが、人々の外出が増えるにつれてニューヨーク市の治安には不安も出始めている。少し前だが、4月24日のニューヨーク市警の発表によれば、重大犯罪は昨年に比べてすでに42.7%も増加したという。内訳は強盗が46.7%、重窃盗罪は54%増えている。

私の住んでいる近隣でも今年になってカージャックが起こったり、フードのデリバリーをしている男性がソースが足りなかったという理由だけで胸を撃ち抜かれて死んだりと、何かと物騒な事件が続き、地下鉄で起きた銃撃にもまたかと反応するくらい感覚がマヒしている。

とはいえ、経済活動はアメリカ政府の予想以上に勢いを増しており、5月4日、FRB(連邦準備制度理事会)は、2000年5月以来22年ぶりに0.5%政策金利を引き上げるという異例の政策を決定した。
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文=高橋愛一郎

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