──この本を書いたきっかけは?
以前スタートアップで働いていた時に、あまりに忙しくしていた。それから逃れるために、青春18きっぷで1週間ほど東北を旅した。山形の小さい旅館にいた時に自分の生活を振り返ると、こんなに人生で忙しかったことはないのに、生産性が伴わないことに気づいて愕然とした。つまり、忙しい=生産性が高いのではない、ということに気づいたんだ。
『Time Off』のページから
その経験をもとに記事を書いたら、友達経由で拡散されて知らない人にもシェアされ、何千回も読まれることになった。読んだ人の中に、アメリカ・テキサスにいる共著者のジョン・フィッチもいたんだけど、彼はもともといかにうまく休むかについて興味を持っていた。それで、記事を読んだジョンが私に連絡してきて、彼が運営しているポッドキャストに出演しないか、って言ってきたんだ。ゲストとして出演した後、一緒に本を書かないかという話になったんだよ。そこから、1年半に及ぶ、一緒に本を書く作業が始まったんだ。
共著者とは「一度も顔を合わせないまま」
──テキサス在住のフィッチ氏と東京在住のフレンゼル氏。顔を一度も合わせないまま、2人で本を書き始めたのか?
そう。リモートワークが主流になるコロナより前にスタートしたんだけど、一度も実際には顔を合わせないまま本の完成に至った。本の完成の時期がちょうどコロナが始まった頃と重なったので、出版パーティでジョンに初めて対面する予定だったのが、2022年5月の今も一度も会っていないままだ。テクノロジーのおかげで、実際に会う会わないにかかわらず、何かを成し遂げることはできることを証明できたよ。
ジョンと私は2人ともソフトウェア開発の経験がたくさんあったので、本の章立てを考える時などにも、共通言語で話している感覚があって、会ったことがなくても、コミュニケーションには苦労しなかった。エンジニア的なアプローチとしては、章の構成の基本となるプロトタイプを作って、10〜15人程度の読者にテスト原稿として読んでもらい、フィードバックをもらって各章に共通する構成をより良いものにしていった。
──同書には、休養、眠り、旅行、エクササイズ、クリエイティビティー、孤独、内省、遊び、テクノロジーなどのタイトルの章立てで、その分野の第一人者とされる過去や現在の人物を取り上げ、そのベストプラクティスが紹介されているが、どうやってこれらの項目や人物を選んだのか。
私には休みをテーマに書き溜めた記事があったし、ジョンはポッドキャストで同じテーマでたくさんの人に話を聞いた実績があったので、それらを元に話し合って、人気のある記事などを中心に章を作っていった。歴史上の人物と現代の人を混在させたいという意図があったので、両方が散らばるようにした。現代の人に関しては、文献から原稿を書く以外にワーク・ライフバランス社長の小室淑恵氏など、取材した場合もある。
『Time Off』のページから