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2022.05.23 07:00

株価急落で生き残るスタートアップが狙う「採用のチャンス」

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ここ数年、スタートアップの創業者たちは、投資家たちのあふれるほどの愛情を受けてきたが、残念なことに、景気のいい話は昨年までのことだった。

カリフォルニア州メンロパークのBattery Venturesのダルメッシュ・タッカー(Dharmesh Thakker)はフォーブスの取材に対し、「景気は一夜にして干上がった」と語った。今は多くの創業者がショック状態に陥っているという。

実際のところ、多くのスタートアップの社員が仕事を失っている。テック業界の雇用を追跡するウェブサイト「Layoffs.fyi」のデータによると、5月前半の2週間で5400人以上が職を失ったが、これは2021年1月以降で最大の数字だという。アンドリーセン・ホロウィッツが出資先を対象に実施した調査でも、半数以上の企業が2022年の採用数を引き下げている。

ロシアのウクライナ侵攻が株価やエネルギー価格に打撃を与え、長引くパンデミックが世界経済を大混乱に陥れている。そんな中、2022年第1四半期にスタートアップに注がれた資金は、前の3カ月から26%マイナスの707億ドル(約9兆円)に減少した。

Redpoint Venturesのマネージング・ディレクターのトマシュ・トゥングズ(Tomasz Tunguz)は、「半年前は、どの企業もできるだけ早く成長しようとしていたが、現在では、採用も投資も控えめにしている」と語る。

雇用の凍結やレイオフは、新興企業がランウェイ(キャッシュ不足に陥るまでの残存期間)を延長するための一般的な方法だ。トゥングズによると、最も強力なファンダメンタルズを持つ企業でさえ、少なくとも12カ月のランウェイを持つようにしているという。

Streamlined Venturesの創設者のウラス・ナイク(Ullas Naik)は、投資先企業に対して、雇用の減速と資金調達の組み合わせによって、ランウェイを18カ月に伸ばすように勧めている。彼は以前は、投資先の5%にデットファイナンス(借り入れ)を勧めていたが、今では10%から15%の企業にこの手法を勧めているという。

一方、フォーブスの取材に応じた投資家の多くは、ベンチャーキャピタルの落ち込みは当分続くとしながらも、アーリーステージの企業に今後3〜6カ月の間に雇用を回復させるチャンスがあると考えている。

「私は、すべての投資先企業に、彼らより大きな会社から人材を引き抜くことを勧めている」とナイクは話す。テック企業の社員の多くは、給与の一部をストックオプションとして付与されるが、彼らは株価の値下がりに直面している。

競合を買収するチャンス


「今から3カ月から6カ月もすれば、そのような人材を引き抜く機会が来るだろう。アーリーステージの企業の創業者は、駄菓子屋に迷い込んだ子供のような気分になるはずだ」とナイクは述べた。

Battery Venturesのタッカーは、さらに踏み込んだ見立てとして、市場が干上がる前に多くの資金を調達した企業には、買収によって安価に人員を増やす機会があると予測している。「手元の資金は、企業にとって大きな強みになる。彼らは大幅なディスカウント価格で競合を買収することが可能だ」

一方で、ナイクのStreamlined Venturesは、少なくとも今後2〜3カ月は新しい企業への投資を控えるという。「新しい投資をする代わりに、既存のポートフォリオの点検を行い、より強いポジションでこの状況から抜け出せるよう準備を進めていく」と彼は語った。

編集=上田裕資

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