3月のCPIは前年同月比8.5%上昇した。上昇の大部分はロシアのウクライナ侵攻を受けた食品やエネルギー価格の急騰によるものだった。半面、変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は前月比0.3%の上昇にとどまり、伸び率は2月から鈍化し、予想も下回った。
アライでマーケットとマネー担当のチーフストラテジストを務めるリンゼー・ベルは、今回の統計に「グリーンシュート(好転の萌芽)」がみられるのは明らかだとして、「インフレは頭打ちしつつある可能性がある」と述べている。
ネーションワイドのシニアエコノミスト、ベン・エアーズは「消費者物価はロシアの侵攻で食品・エネルギー価格が急騰した3月にピークに達した可能性が高い」と分析。ただ、物価下落のペースは緩慢なものとなり、今年から来年にかけて物価上昇率は高止まりしそうだとの見方を示す。
S&Pグローバル・レーティングの米国担当チーフエコノミスト、ベス・アン・ボビーノも「物価上昇の頂点に近づいたか、すでにそれに達したと思われる」とする一方、「正常に戻るまでには時間がかかるだろう」と警告を発している。
ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディも同様に、インフレはピークに達しつつあるとの認識を示しつつ、米経済にとって向こう数カ月は「厳しい」ものになり、リセッション(景気後退)に入るおそれも30%ほどあると警戒している。
一方で、3月のコア指数の伸び率が前月から鈍化したにもかかわらず、食品や住宅を中心に物価上昇はさらに進むとみる向きもある。ビスポーク・インベストメント・グループは3月の統計の数値が「近年の数値と比較して依然としてかなり高いのは間違いない」と注意を促している。
コメリカバンクのチーフエコノミスト、ビル・アダムスも「3月には耐久財の物価上昇が緩やかになったとはいえ、全体の物価上昇は好転する前に悪化しそうだ」と予想。「インフレは2022年から23年にかけて消費者の心理や購買力を圧迫するだろう。米国の実質GDP(国内総生産)成長率は今年の3.2%から来年1.9%に減速すると予想しているのもこれが大きな理由だ」と述べている。
3月に政策金利を0.25%幅引き上げ、2018年以来となる利上げに踏み切った米連邦準備制度理事会(FRB)は、インフレの抑え込みに向けて難しい戦いに直面している。バンク・オブ・アメリカのエコノミストらは、FRBが年内に0.5%幅の利上げを3回実施すると予想。全体の物価上昇率は足元の水準から下がる可能性があるものの、とくに食品価格は「年間を通じて高騰が続く」との見通しを示している。