もともとバラバラの地域で活動していたご当地ヒーローであるため、それぞれのキャラクターの外見には統一感がなく、スーツに使用されている色も被っていて、誰がセンター(主役)なのかわからない。しかし、だからこそ、その状況を逆手に取った設定が支持を得ていると、下青木は説明する。
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「『ドゲンジャーズ』はあえて『主役』が存在しない設定にしています。ひとりひとりのヒーローを平等に扱い、個性を丁寧に描いているので、見ているうちにどんどんヒーローの個性がわかるようになって、好きになるんです。子どもだけでなく、親世代(特に20代〜40代の女性)からも高く支持されています」
特撮好きオーナーの発想から一大プロジェクトに発展
「ドゲンジャーズ」を企画・管理しているのは、同作品専門の広告代理店で版権運用会社でもあるエムマーケットエージェンシー、映像制作および脚本を手掛ける悪の秘密結社などで組織されたドゲンジャーズ製作実行委員会だ。
下青木によると、「ドゲンジャーズ」が生まれたそもそもの原点は、大賀薬局のPR活動だったという。
福岡には「悪の秘密結社」というヒーローショー専門のイベント会社がある。福岡エリアで調剤薬局やドラッグストアを展開する大賀薬局代表取締役の大賀崇浩は、自社のPRを担うヒーローの制作を思い立ち、もともと親交のあった悪の秘密結社代表取締役の笹井浩生にキャラクターデザインを依頼したのが始まりだ。
誕生したヒーローの名は「薬剤戦師オーガマン」。「薬飲んで寝ろ」というキャッチコピーとともにその姿をお披露目すると、人気は一気に拡散し、Twitterでトレンド入りするほどの注目を集めることとなった。
オーガマン(左)とルーキー(右) (c)DGN3
もともと大の特撮好きだった大賀と笹井は「これを機にオーガマンを主役にした特撮番組をつくりたい」と考えた。しかし、一般的な特撮番組のように色違いのオーガマン戦隊を4体作るのは費用がかかりすぎる。それならば、すでに九州で活躍しているヒーローたちを仲間にすれば良いのではないか──?
「ドゲンジャーズ」の核である「実在のヒーローたちを出演させる」というアイデアは、こうして生まれた。その後「ドゲンジャーズ」は、悪の秘密結社が制作会社となり、大賀薬局をはじめとするスポンサーを巻き込みながら、九州を盛り上げる一大プロジェクトへと発展していった。
福岡エリアの企業70社がスポンサーに名を連ねる理由
「ドゲンジャーズ」は、そのビジネスモデルにも注目すべき点がある。
一般的な特撮番組は、番組に登場したキャラクターやアイテム、または映像そのものの版権を玩具メーカーや配信会社などに販売することによって制作費を得ているのに対し、「ドゲンジャーズ」は地元企業の拠出するプロモーション費用を主な活動原資としている。
下青木は、同作品を「プロダクトプレイスメント特化型映像作品」と呼ぶ。劇中で小道具や背景、ヒーローのスーツに印刷されたロゴなどを通じて、スポンサー企業を宣伝するのだ。
ヤバイ仮面の胸には企業のロゴが (c)DGN3