「バリュー株投資の魅力度がこれほど高まっているときはない」。こう力説するのは、英国領バミューダの資産運用会社オービス・インベストメンツの日本法人の時国司社長だ。同社はコントラリアン(逆張り投資家)として知られている。強気が支配的なときには買い、弱気が優勢な場面では手仕舞うという運用スタイルだ。
日本拠点で運用するファンドの組み入れ上位10銘柄は三井住友フィナンシャルグループ、三菱商事、INPEX、スギホールディングス、住友電気工業、大和ハウス工業、アサヒグループホールディングス、石油資源開発、クスリのアオキホールディングス、大和工業。銀行、商社、エネルギー関連など割安な景気敏感株が目立つ。
実は、バリュー株人気は今年に入って活発化したわけではない。昨年1年間の上昇率はバリュー株が約15%とグロース株(同7%)を上回る。資金流入を後押ししてきたのは、新型コロナウイルスとの戦いが長期化する中で台頭した景気回復シナリオだ。
欧米各国中心に感染予防と経済活動の両立へ舵を切る動きが本格化。変異ウイルスの「オミクロン型」感染が拡大しても「経済全体への影響は軽微」との楽観論が勢いを増した。
国際通貨基金(IMF)は昨年10月に公表した世界経済の見通しで、21年の実質国内総生産(GDP)の伸び率を5.9%と想定。22年も4.9%の伸びを見込む。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は最近の米独両国の長期金利上昇について、「経済のファンダメンタルズの持ち直しを映した動き」と見る。
しかし、足元は慎重論が優勢。バリュー株の先行きにも不透明感が漂う。リスク要因として大きくクローズアップされているのがインフレだ。いったんは落ち着いたかに見えた原油価格が再び、1バレル=80ドル台を突破。非鉄金属や食料品なども軒並み値上がりしている。これに賃金上昇が追いつかなければ、生活は厳しさを増すばかりだ。「物価上昇は一時的」としていたFRBも軌道修正を余儀なくされた。
最近のニューヨーク株市場は「引け味」の悪さが目立つ。朝方こそ比較的堅調な展開だが、取引終了にかけて売られるパターンが多い。ある日系証券の担当者は「脇を締めたほうがいい」と警戒する。
連載 : 足で稼ぐ大学教員が読む経済
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