汚染や食中毒が報告されたということではない。アサイーが健康に良いことは、間違いない(ただし、いわゆる“スーパーフード”ではない。どのような食品にもサプリメントにも、本当に“スーパー”なものはない)。
アサイベリーは、南米原産のヤシ科の植物、アサイーの果実。ブルーベリーやブラックベリーなどその他の多くのベリー類と同様に、抗酸化物質や何種類かのビタミン、少量の食物繊維を含んでいる。健康に良い食品として知られているものだが、アサイーが肌を明るくしたり、関節炎やED(勃起不全)を治したりするわけではない。
また、このアサイーの成分は興味深いことに、濃縮すると金属イオン(鉄、マンガン、銅)の含有量が非常に高くなる。タブレット状にしたものを摂取していることが、磁気共鳴画像(MRI)検査の結果に影響を及ぼすこともあるとされている。
そして、この“スーパーフード”と呼ばれるアサイーのサプリメントについてはもう一つ、少し落ち着いて考えてみるべき、あるいはいっそのこと、摂取をやめてしまった方がいいかもしれない理由があることが分かった。
アサイーそのものが問題なわけではない。問題は、「スーパーフードである」と過剰に宣伝されていること、そして、そのアサイーの果実がどのように収穫されているかということだ。
米紙ワシントン・ポストが報じたところによると、高さ20m近くにまで成長するアサイーの木は幹が細く、大人には登って果実を収穫することができない。そこで駆り出されるのが、5歳くらいの子どもたちだ。
子どもたちはナイフを手に持ち、アサイーの木に登り、たくさん実を付けた枝を切り取って集める。バケツに収められたアサイーの実の多くは、米国に送られ、加工され、10〜15ドル(約1140~1700円)のアサイーボウルや、スムージーとして販売される。
“ブラックゴールド”として知られるアサイーの実を収穫するために駆り出される子どもたちは、ブラジルでは法律によって守られていない。この仕事をする子どもたちの多くが、転落や、刃物や鋭いヤシの葉によるケガを負っている。働き手を確保する目的で、誘拐される子どもたちさえいるという。
いくつかの国際機関が、アサイーの輸出に関わる業者や、収穫する家族の側の費用や経費などについて調査し、児童労働についても監督している。バケツいっぱいに集めたアサイーの実は、こうした子どもたちの家族に3ドル程度の稼ぎをもたらしているかもしれない。だが、それでもアサイービジネスは危険をはらむものだ。より多くの利益を得ているのは、生産者よりも消費者の側だ。