引退する予定のメルケル首相に同行したもので、同首相の所属するキリスト教民主同盟(CDU)のハウアー氏は「(ドイツの)外交政策の継続と民主主義の構造の強さを示すもの」などとツイート。ショルツ氏の早いタイミングでのお披露目は、次期政権への円滑なバトンタッチに対する国際社会の不安を鎮めようとの狙いがありそうだ。
連立を組む中道左派の社会民主党(SPD)が第1党に
9月に行われた連邦議会選挙は、16年に渡って政権を担当したメルケル首相の後継者選びにつながる戦いだった。中道右派の政権与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が歴史的な敗北。得票率が24.1%にとどまり、戦後初めて30%を下回った。第1党となったのはCDU・CSUと連立を組む中道左派の社会民主党(SPD)で全735議席のうち、206議席を獲得。得票率は25.7%に達した。
選挙結果には「ポスト・メルケル」の座を争う首相候補の人気が反映されたとみられる。SPDのショルツ候補は63歳のベテラン政治家だ。17歳でSPDに入党し、労働法の弁護士としての活動などを経て1998年、連邦議会選挙に初当選。SPD所属のシュレーダー前首相時代には党事務局長の要職を担い、07年にメルケル首相の連立政権に労働相として初入閣した。
その後、ハンブルグ市長を歴任し、18年3月からは副首相兼財務相としてメルケル首相を再び支え、コロナ対応で高い評価を得た。
かつてのニックネームは「ショルツォマット」。ショルツ(Scholz)と、ドイツ語で「自動販売機」「機械」などを意味する「automat」の合成語だ。これは同国のメディアが命名したもの。感情を排した官僚的なスピーチなどを揶揄した表現だ。海外の一部メディアには「退屈な人物」などと評されている。
たが、選挙戦でショルツ氏はテレビ討論でのライバル候補の弱点を巧みに突いた冷静な対応や安定感などが支持を集めた。これに対して、CDU・CSUの首相候補だったラシェット氏は7月に大規模洪水の被災地を訪問した際に談笑する姿が報じられ、批判を浴びた。
同じく有力候補と目された緑の党のベーアボック共同党首にも経歴詐称などの疑惑が浮上。ショルツ氏も選挙戦終盤、財務省が絡んだ疑いのあるマネーロンダリングの調査をめぐり、国会で答弁を求められたが、無事に乗り切った形だ。