週32時間勤務の是非、フランスで議論再燃

Alaattin Dogru/Anadolu Agency via Getty Images

フランスが2000年、週35時間勤務制を法制化したのはよく知られている。そして今、同国の政治家や新聞は、新型コロナウイルスの流行による経済危機を受けて、それをさらに週32時間(あるいは週4日)へと減らせないかを議論している。

フランスでは、契約上の勤務時間が35時間であっても、多くの人はそれ以上の時間働く。特に民間企業では、9時から5時以降までの勤務が普通だ。公務員でも、週に35時間以上勤務することがある。企業・機関によっては、残業時間を代休として取り戻すことができる。

他の国と同様、週4日勤務という考え方はフランスにとって新しいものではない。仕事や失業、自動化の増加や生活の質に関する政治的議論で、これまで話題に上ってきた。左派紙リベラシオンは先日、週4日勤務を第1面で特集し、次のように論じた。

「これまでは、週4日勤務の案が提示されても、それほど真剣に受け止められなかった。しかし、新型コロナウイルスの流行、働き方の再考により、新たな命が吹き込まれるかもしれない。(…)週4日勤務、週32時間勤務に一斉移行すれば、150~200万の雇用が生まれる。これは週35時間勤務制により生まれた追加の仕事の数をはるかに上回る。この可能性を真剣に考えてはどうだろう?」

フランスでは労働組合が非常に大きな力を持っている。そうした労組の一つであるフランス労働総同盟(CGT)は、勤務時間の短縮を支持。CGTのサンドリーヌ・ムレー書記はニュースサイト「ザ・ローカル」に対し、「これは仕事の構造を異なる視点から考える機会だ」と指摘。週4日勤務に限らず、週5日勤務で1日の勤務時間を短縮することもあり得ると述べている。

フランスは労働者の権利を厚く保護する国だが、労働者は他国と比べても高い生産性を維持している。米ビジネス誌ファスト・カンパニーによると、米国人は退職後の年数が平均で18.1年だが、フランス人は24.8年だ。実際、現在のフランスの定年は63.3歳と低い。

世界では多くの企業が週4日勤務制を思案中で、週5日勤務と同等の給与を支払うことを考えている会社もある。米紙ニューヨーク・タイムズによると、英蘭消費財大手ユニリーバは現在、ニュージーランドで1年間にわたり、従業員81人に週4日勤務をさせつつも週5日勤務と同じ給与を支払う試験を実施中だ。

1955年に提唱された「パーキンソンの法則」では、仕事の量は完了のため割り当てられた時間を埋めるまで増え続けるとされている。このことから、生産性を保ちつつ、短時間で仕事を完了することは可能だと考える人もいる。コロナ禍により、企業はここ1年間で多くのことを学んだ。その一つが、従業員の生産性は費やした時間ではなく成果で測れるというものだ。近く行われるフランス大統領選で、この考え方がどれほど広まるかは分からない。

編集=遠藤宗生

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