感染ゼロ戦略は「ばかげている」、豪首相はNZのコロナ対策に否定的

ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相(Photo by Mark Tantrum/Getty Images)

ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は、感染力が強まった新型コロナウイルスの変異株「デルタ株」の市中感染が拡大しているとして、全土で8月17日から開始したロックダウン(都市封鎖)を再度延長すると発表した。

男性1人の市中感染が確認されたことを受け、4段階ある警戒レベルを最も厳しい「レベル4」とする必要があるとして実施されたロックダウンは、少なくとも27日まで継続されることとなった。

およそ6カ月ぶりに市中での感染が確認されて以降、同国では24日までに、148人の感染が報告されている(うち137人は最大都市オークランドで確認)。

アーダーン首相は、「(市中)感染ゼロ」を目指して当初から採用してきた「厳格に、早期に」の戦略は、長期的なロックダウンを回避することにつながってきたと説明。この戦略を堅持すると断言している。18日には毎日行っている記者会見で、次のように語った。

「現時点では、誰もがこれに同意しています──排除(ゼロにすること)が戦略です。これについて、私たちの間には議論も論争もありません。私たちにとって、これが最も安全な選択肢だからです」

隣国の首相は異見


一方、アーダーン首相が再びロックダウンの期限の延長を発表した翌日の24日、隣国オーストラリアのスコット・モリソン首相は、市中感染ゼロを目指すニュージーランドの戦略は「ばかげている」と発言した。

オーストラリアも現在、パンデミック発生以来、最悪の感染状況に見舞われている。だが、モリソン首相は、「(自国の)どの州も準州も、デルタ株から永久に身を守ることができると考えるのはばかげている」とコメント。当初はパンデミックへの対応に成功したまれな国として称賛された隣国でも、「それはできない」と述べている。

オーストラリアのニュースメディア9Newsによると、モリソン首相は次のように語り、ワクチン接種率を引き上げることの重要性を訴えている。

「新型コロナウイルス感染症(が存在する現在)は、まったく違う世界だ。そこに出ていかなければならず、その中で生きていかなければならない。洞窟の中にこもっているわけにはいかないし、安全に洞窟の外に出ることも可能だ」

接種率は両国とも低迷


ニュージーランド政府が公表しているデータによると、同国で新型コロナウイルスワクチンの接種を完了した人は、接種対象者のおよそ23.6%にあたる約100万人。オーストラリアの接種完了者の割合は、30.88%だ。両国ともに接種率が伸び悩み、感染拡大リスクが高い状態が続いている。

ニュージーランドは現在の感染状況になる前には、厳格な入国制限措置と検疫手続き、徹底した接触追跡などにより、市中感染の拡大を実質的に阻止できていた。パンデミックの発生以降、同国で報告されている死者は、26人(25日現在)にとどまっている。

世界中に称賛されてきたニュージーランドの「感染ゼロ」戦略は、同国が長期間に及ぶロックダウンを行うことなく、感染拡大の封じ込めに成功してきたことを意味している。

オーストラリアも同様に、今年の初めには局所的に実施した厳格なロックダウンにより、市中感染の拡大をほぼ食い止めた。だが、およそ2カ月前、南東部ニューサウスウェールズ州の州都シドニーで最初にデルタ株の感染者が確認されて以降は、感染拡大を制御することに苦慮している。

編集=木内涼子

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