その一方でバーガーは、シェブロンには「今のところ、自ら大規模な風力発電事業に取り組みたいという明確な考えはない」と続けた。「当社は、洋上風力発電とグリーン水素(ならびにシェブロンの中核である石油とガス事業)が交わる可能性を見据えている」
米石油大手のなかで洋上風力発電に投資をしたのは、シェブロンが初めてだ。しかし、欧州ではすでに、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル、仏トタル、英BP、ノルウェーのエクイノールといった多くの石油大手企業が、洋上風力発電を支援している。
シェルは、提携するエクイノールなどとともに、イギリス北東沖合の大陸棚に「ドッガーバンク風力発電所」を建設する予定だ。この発電所が完成すれば「世界最大の洋上風力発電所」となり、発電量は合わせて2400メガワットに上るという。
2020年3月にはトタルが、英ウェールズ沖のケルト海で進む浮体式洋上風力発電プロジェクト「Erebus」の権益80%を取得する合意書に署名した。
また、エクイノールも洋上風力発電に幅広く取り組んでいる。同社とBPは2021年1月、米ニューヨーク州の選定を受け、ロングアイランドの南部沖と東部沖という、大西洋上にある2つの洋上風力発電基地を通じて、同州に電力を供給する合弁プロジェクトをスタートさせることが決定した。
コンサルティング企業FNFリサーチ(FNF Research)によると、洋上風力発電の世界市場は、2026年には875億ドルに達し、2019年の361億ドルから成長する見込みだ。洋上風力発電業界には、2021年2月に大きな追い風が吹いた。韓国政府が432億ドルを投じ、2030年までに巨大な洋上風力発電所を建設することを発表したのだ。この事業は、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルを目指す韓国の取り組みの一環だ。欧州連合(EU)も同じく、2050年までのカーボンニュートラル達成を目標に掲げている。