マスクは2月3日、同社が自律走行技術の全面的ライセンス供与に関する予備的協議を行なっていると述べた。先進運転支援システム(ADAS)機器のゴールドラッシュが近づいているわけだ。
モノリシックは、こうしたADASコンポーネントを稼働させる集積回路を製造している。
マスクが自動車業界の進歩を支援すると宣言したのは、これが初めてではない。2006年には株主宛の書簡のなかで、業界に電動化の受け入れを促す意向を示した。彼は計画で、まずは生産数の少ないスポーツカー、次いでより主流の高級車、そして大衆市場向けの乗用車の順に電動化を進めるとした。テスラで最も安価な「モデル3」は年間50万台の販売を達成しようとしているが、5万ドルのセダンが大衆向けと言えるかは微妙なところだ。
マスクが大きな成功を収めている点は、業界におけるリーダーシップの確立だ。運転の楽しさと未来志向を掲げたテスラ・ブランドは、10年前には誰も想像できなかったほど急速に、自動車メーカーを電動化と自律走行の推進に向かわせた。いまやすべての主要自動車メーカーが、電気自動車の生産を計画している。ゼネラルモーターズ(GM)やフォルクスワーゲン、ボルボは、すべての車種のEV移行計画を立てている。
自動車業界を内燃機関から離れさせることで得られるもうひとつのメリットは、未来の交通手段の再定義だ。自動車業界のリーダーたちは、マスクに後押しされるかたちで、オート・ステアリングやブレーキ、多数のセンサーによって衝突を回避する、高度な安全システムの開発に本腰を入れ始めた。
こうした新たなシステムは、複数の前面・背面カメラ、ドライバーモニタリング装置、レーダーおよびその他の各種センサーで構成されている。
テスラの自動車は、こうしたシステムのすべてを、業界最高水準のソフトウェアパッケージである「オートパイロット」と統合している。
オートパイロットは競合製品のはるか先を行っているが、これはテスラ製自動車の特性によるところが大きい。テスラの車は常に電源がオンになっていて、ネットワークに常時接続している。毎日、数十万人のテスラオーナーが、実際の環境のなかでこのソフトウェアを使用している。作成されたデータはすべてテスラのサーバーに送られ、人工知能を用いて解析される。
マスクは、2月3日に行われたアナリストとの電話会議で、完全な自律走行を実現するためにはやるべきことがまだたくさんあると述べた。オートパイロットは今のところ、シングルカメラとシングルフレームのみを使用しているが、テスラのエンジニアチームは、サラウンドビュー・カメラ映像の同時処理を行えるよう、AIシステムに学習させる必要があるとのことだ。