経済・社会

2021.02.12 17:30

コロナ禍に打ち勝つ新潟・燕三条のナゼ


DXに加えて販路を「HX化」


ただし、モノをつくるだけでは、注文数は上がらない。そこで重要なのが、販路改革だ。販路のDX(デジタル変革)としてEC化を進めるという話はよく聞くが、燕三条では、デジタルに限らず販路の「HX」(ホームトランスフォーメーション)というものをしていた。

決して新しい話ではない。主にカタログ通販である。言い換えると、「出かけなくても家で買い物ができる販売方法=HX」をもともと推し進めており、以前から多くのカタログ通販企業と取引があったことで、在宅化の追い風をとり逃さなかったのだ。

村の鍛冶屋のようにネットで販売する事業をいち早く展開していた会社がけん引役となったことで、すでに多くの企業がネット販売にも力を入れていた。リアル店舗、カタログ通販、ネット販売、というマルチチャネルの強化が新型コロナ以前から十分に育っていたのだ。百貨店やホームセンターなどの販路だけでなく、家の中からでも買える販路としてアナログとデジタルを含めて広く網を張っていたことが、今回の有事における備えとなり、結果として売り上げの最大化につながったというわけだ。

スピーディにニーズに合った商品開発ができる体制と、それを流通させる多面的な販路。燕三条地域の躍進からは、その備えの重要性が浮き彫りになったといえるだろう。


なかやま・りょうたろう◎マクアケ代表取締役社長。サイバーエージェントを経て2013年にマクアケを創業し、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」をリリース。19年12月東証マザーズに上場した。

文=中山亮太郎 イラストレーション=ichiraku / 岡村亮太

この記事は 「Forbes JAPAN No.077 2021年1月号(2020/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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