米国の退去猶予措置が終了、年初に500万世帯が家を失うおそれ

Nathan Howard / by Getty Images

米国では現在、1400万以上の世帯が賃貸住宅から立ち退きを求められる危機にさらされていることが、最新の報告書で明らかになった。そのうちのおよそ500万世帯には、早ければ2021年1月1日にも立ち退き通知書が届くと見られている。

米疾病予防管理センター(CDC)が発令していた、賃借人の立ち退きを一時猶予する「家賃滞納者の強制退去を禁止するモラトリアム措置」が12月31日に終了するためだ。これにより、何千人もの人が不要に命を落とすおそれがあることを、社会科学研究ネットワーク(SSRN)が発表した別の研究結果は示している。

CDCは2020年9月4日、全米を対象に、2020年12月31日までの立ち退き猶予措置を発令した。公衆衛生の保護と、新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的としたものだ。

この措置は、住宅の貸主や家主が、家賃が不払いとなっている賃借人に対して立ち退きを求めたり、占有の訴えを起こしたりすることを禁じており、米国全州と米国領に適用されている。

グローバル・アドバイザリー会社スタウト・リシウス・ロスは11月、米国勢調査局のデータをもとにした報告書を公表した。それによると、米国の世帯がパンデミック中に滞納した家賃は累計で250億ドルに上るとみられている。そして、CDCの措置が期限切れを迎えれば、490万世帯に立ち退き通知書が届くことになるだろう。

一方、SSRNが発行した科学ジャーナルに掲載された先述の研究結果によると、「立ち退きによって、世帯内での過密状態が増えることと、個人が社会的距離の確保という指示に従いにくくなることで、新型コロナウイルスの感染拡大が加速する可能性がある」ことが示されている。

査読前のこの論文は、モラトリアム措置が解除された27州で立ち退きが増加した結果、新型コロナウイルス感染者は推定で43万3700人の超過、同ウイルス関連死者は1万700人の超過になったことを明らかにした。

フロリダ州マイアミ・デイド郡ホームレス評議会(Miami-Dade County Homeless Trust)のロン・ブック(Ron Book)理事長は、「実際問題として、人々が自宅から追い出されないようにする方法を見つけない限り、膨大な数の人命が失われる可能性がある」と述べた。

米連邦議会は、2020年3月の「コロナウイルス支援・救済・経済保障(CARES)法」以降、大型救済策を成立させていない。上院議員の超党派グループは12月はじめ、救済法案「Bipartisan Emergency COVID Relief Act of 2020(超党派による2020年新型コロナウイルス感染症緊急救済法)」を提出した。規模は9080億ドルと伝えられており、4カ月にわたって失業給付金に週300ドル上乗せする案や、失業保険が適用されない自営業者など数百万人への支援を12月末以降も4カ月間延長する案などが盛り込まれている。

また、下院議長ナンシー・ペロシ(民主党、カリフォルニア州選出)は12月10日、年内にほかの連邦政府支援法案を可決すると明言し、「法案を可決せずに休みには入れない」と述べた。

メリーランド州アナポリス市住宅局は12月8日、現時点で300以上の世帯、700戸以上が家賃を滞納しており、総額60万ドルが未払いとなっていると発表した。地元紙『バルチモア・サン』によると、同市の公営住宅入居者の40%以上が1月に立ち退かざるを得ないおそれがある。

一方で、ウイルス感染が拡大した過去8カ月のあいだ、米国のビリオネア614人の純資産は合計で9310億ドル増加した。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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