AP通信は1848年以来、大統領選挙において各州の集計データを統括し、全米のメディアに提供しており「投票結果のゴールドスタンダード」を自負している。同社は、選挙結果の集計や配信プロセスにブロックチェーンを用いることで、その透明性や信頼性をさらに高めようとしている。
AP通信が公開する集計データは、外部の人々がブロックチェーン上でその正確性を確認できる。
フェイスブックやツイッターは、新たなテクノロジーで有権者の行動に影響を与える虚偽の主張を排除しようとしているが、AP通信はデータの改ざんが不可能なブロックチェーンの強みを活かし、選挙のデータ集計の在り方を変えようとしている。
集計された投票結果は、独自のAPIを通じてメディアや様々な団体に配信され、各候補者の得票数や獲得代議員数、州ごとの結果などが確認可能になる。
さらに、AP通信による集計結果は、ウィキペディアの進化版的な位置づけの「エブリペディア(Everipedia)」で公開される。エブリペディアはブロックチェーンを基盤とした情報キュレーションサービスで、正確なデータを提供したユーザーにはトークンが配布される仕組みになっている。
エブリペディアは、分散型オラクルネットワークを提供するチェインリンク(Chainlink)と協力し、この仕組を構築した。データはイーサリアムやEOSを基盤としたスマートコントラクトから、外部の開発者に提供される。
「AP通信社が集計した投票データがブロックチェーン上で公開されるのは、史上初の事であり、巨大なマイルストーンと言える」と、チェインリンクのビジネス開発責任者のダニエル・コチスはコメントした。
ブロックチェーン技術を用いて投票結果を追跡する試みは、これまでも小規模な選挙で実施されたことがあるが、AP通信の取り組みは史上最大のものとなった。
ブロックチェーンを活用した選挙の不正防止や、投票率向上を目指す取り組みとしては、他にVoatzや、Votem、Agora Voteなどが知られている。これらの団体や企業は、投票者の本人確認や、投票が正確に集計されたことを証明するツールなどを提供しようとしている。
本人確認や集計の正確性の証明は、今年の大統領選挙においても重要な課題となっている。