エア・ウォッカの原材料はたった2つ。二酸化炭素(CO2)と水だ。通常のウォッカの製造工程を考えれば、不思議なまでにシンプルだ。ウォッカを製造するときはたいてい、糖質かでんぷん質が含まれた原材料を発酵させてから、蒸留してアルコール濃度を高める。
一方、エア・カンパニーの新しいウォッカは、異なる製造工程を経て作られる。同社では、太陽光発電による再生可能エネルギーを活用した、独自の特許製法が用いられているのだ。
同社の製法ではまず、CO2を空中から抽出し、それを純粋なエタノールへと変えて、ウォッカにする。製造されるエア・ウォッカ1本あたり、温室効果ガスが1ポンド、空中から除去されるので、世界初のカーボン・ネガティブな(排出よりも除去する二酸化炭素が多い)蒸留酒ができると同社は説明している。
そうした工程を経て生まれるのが、80プルーフ(アルコール度数40度)のウォッカだ。純度がきわめて高く、イギリス版『GQ』に言わせれば、その味は「まるで水のよう」で、「雑味がなく、光の破片のように切れ味がいい」という。
この革新的な製品により、エア・カンパニーは、賞金2000万ドルを競い合う「Carbon XPRIZE」の2020年ファイナリストとなった。Carbon XPRIZEは、米電力会社NRGエナジーと、カナダのオイルサンド技術革新同盟COSIAが出資して行われる世界的コンテストで、排出されるCO2を使用可能な製品へと転換できる画期的な技術に与えられる。
とはいえ、エア・カンパニーは単なるウォッカ・メーカーではない。同社を率いる共同創設者の最高経営責任者(CEO)グレゴリー・コンスタンティンと最高技術責任者(CTO)のスタッフォード・シーハンは、「未来の形成に役立つ製品を概念化し創造する、ニューヨークのテクノロジー&デザイン企業」を自称する。
エア・カンパニーは、持続可能なスタートアップとして、独自の特許技術を開発している。それらはすべて、空気中の二酸化炭素を、付加価値のある製品へと転換して世界に役立てるという使命を念頭に設計されている。私たちは今後、香水や、エタノールベースの一般消費者向け商品をはじめとするほかの同社製品を目にすることになるかもしれない。
エア・ウォッカは現在、同社のeコマースサイトから直接購入できる。または、ニューヨーク在住者なら、アルコール飲料の通販を行う「Minibar」や「Drizly」のアプリやサイトでも入手可能だ。直接購入したい人のために、ニューヨークとニュージャージーにある一部の小売店でも取り扱っている。
カーボンネガティブのエア・ウォッカは、750mlのボトル入り。価格は、供給量と店舗によって異なるが、同社のeコマースサイトなら1本65ドルから74.99ドルだ。エア・ウォッカは、ロックで飲むのが断然おススメだが、雑味のないフレーバーを損なわない、マティーニのようなカクテルでも楽しめる。