新型ウイルスのパンデミック(世界的大流行)がほぼ全世界に影響を与える中、多くの人が治療法や感染予防法を求めて信頼できない情報源に頼るようになり、有害な薬品や物質の摂取につながった。
流行初期から、新型ウイルスに関するデマや立証されていない主張、陰謀説が人々の間で拡散。発信源となったのは、十分な知識がないのに伝染病学の専門家を自称する人々や政府の高官などさまざまだ。
マサチューセッツ工科大学(MIT)が創設した独立メディア企業MITテクノロジーレビュー(MIT Technology Review)は今月掲載した記事で、ソーシャルメディア上で誤った情報を含むページが閲覧された回数は今年1月から5月の間に推定38億回に上ったと指摘している。
こうした誤情報の代償として、命が失われたり、深刻な健康被害が生じたりしている。
米国熱帯医学・衛生ジャーナルの論文は、この問題の重大さを浮き彫りにした。以下に、論文から抜粋した概要と主な分析結果、提言を紹介する。
・研究チームは、誤った情報が公衆衛生に与える影響を測定するため、ニュースメディアやフェイスブック、ツイッターなどのウェブサイトに掲載された新型コロナウイルス関連のデマや陰謀説を調査した。
・こうしたサイトでの2019年12月31日から2020年4月5日までの間のデータを、他の情報源から得られた事実に基づくデータと比較し、分析した。
・研究チームは、「うわさやスティグマ、陰謀説」の報道を87カ国25言語で2311件特定した。
・こうした誤情報の内訳は、病気や感染、致死性に関するものが24%、予防策に関するものが21%、治療に関するものが19%、発生源などの原因に関するものが15%、新型ウイルスに関連した暴力事件に関するものが1%、その他が20%だった。
・世界のメディア報道を分析したところ、800人の死亡と5800人余りの入院が、誤情報に関連した行動が直接の原因だった可能性があることが示された。
・これには、メタノールを飲んで視力を完全に失った人々や、消毒剤やアルコールベースの除菌ローションなどを飲んで死亡した人々が含まれる。
・研究チームは、保健機関や専門家らが新型ウイルスに関連した誤情報をオンライン・オフラインで積極的に監視し、地元当局と協力して地元地域内で正しい情報発信をすべきだと提言している。