さてマーケティングは、どれぐらい重要なのか?
という問いはとても難しい問題です。
たしかに世の中にはマーケティングが重要なケースもあります。「いい商品で、いいプロダクトではあるが、顧客に十分に魅力が伝わっていないから売れていないサービス」も存在しているのは事実です。
一方で、多くのビジネスパーソンがなんとなく語る「うちの会社はマーケティングが弱いからさぁ」という言葉ほど、定義が曖昧で、バカバカしいものもないからです。
現に、上のドキュメンタリーの中で、ジョブズはこのような趣旨のことを語っています。それは「マーケティング部門というのは、自分たちの成果を過大に評価しすぎることがある。一つの商品が売れるには、実際には圧倒的な数の技術や、製造が存在しているにもかかわらず、マーケティングは広告予算というものを使ってあたかも自分たちの成果によって、前年比120%などを達成したと勘違いする」と。
その上で、このようなことを結論づけています。
「そして結果的に、一番企業にとって重要な商品やプロダクトの改善への力が弱まり、競争力が落ちていく」と。つまり、Appleが衰退した理由は、マーケティングに過度に重点が置かれたことにこそあった、と。
皆さんはどう思うでしょうか? 皆さんの会社でも同じような現象は起きていないでしょうか?
作ることとは、もっとフィジカルな仕事である
さて私は普段、会社を経営しながら、作家活動もしています。その中で、同様な感想を思うことがあります。それが「今の若い人は、マーケティングに過度な幻想を抱いている」ということです。
そしてもう一つが「作ることとは、もっとフィジカルな作業なのになぁ」ということです。
そもそも、私は、仕事の本質とは「作ること」にあると思っています。マーケティングや、財務、営業、法務、広報、企画など、ありとあらゆる職種の真ん中には必ず何かしらの「作ること」があります。
たとえば、コンサルティングファームという無形のサービスを提供する会社ですら、その支援先である会社はメーカーや、IT企業という、「何かを作る人たち」が必ず存在しています。つまり、仕事の本質とは本来「つくること」なのです。
そして、作ることとは実は極めて「フィジカルな作業」です。ほぼ必ずです。たとえば、家具を作る、料理を作る、ソフトウェアを作る、本を作る。これらの仕事は必ず、フィジカルな作業が伴います。さらにいうのであれば「手」を使ったフィジカルな作業です。
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ここに落とし穴があります。