河合楽器製作所は、1985年からミニピアノを販売しているが、他社との共同製作は今回が初めてとなる。なぜ今回のコラボレーションミニピアノが誕生したのか。また、なぜ家具メーカーである飛驒産業とのコラボレーションになったのか。製品の裏にある想いを、製作に携わった河合楽器製作所のデザイナー 姜さんに話を聞いた。
きっかけは共通の想いから
なぜ今回のコラボレーションが決まったのですか?
今回デザインを担当した飛驒産業の村上さんと私が学生時代の知り合いだったのですが、2年前にインテリアの展示会で偶然再会したのが飛驒産業さんとの交流の始まりです。ピアノのデザインを考えるにあたり、ピアノはリビングに置かれることも多いので、もともとインテリアのデザインに興味があり、飛驒産業さんとの交流をきっかけに一緒に新しいものができないか?という構想が生まれました。
“たったひとつの家具を少しでも長く使っていただきたい”という飛驒産業さんの家具づくりに対する想いを伺った際、ミニピアノが浮かびました。ミニピアノは、小さなお子様でも簡単に弾ける「はじめてのピアノ」として“お子様のためのもの”というイメージが大きいですが、大人にも楽しんでもらいたいと感じていました。幼少期のミニピアノを大人になっても大事にしてもらいたい、この想いが飛驒産業さんの家具づくりへの想いと共通していると感じ、ミニピアノでのコラボレーションを提案しました。
家具のようなずっとそばにある存在を目指して
今回のデザインのポイントを教えてください。
コラボレーションのきっかけでもあったお子様から大人まで幅広い年代の人に楽しんでもらいたいという想いをどのように形にしていくかを軸として開発を進めました。「ずっと大切にしてもらえる存在」にするにはどうしたらよいかとても悩みましたが、ピアノも家具も一度買ったらずっと愛されている、その両方の良さをミニピアノにも落とし込めればコンセプトに近づくのではと考え、今回のデザインに決定しました。飛驒産業さんの曲木技術を取り入れピアノ特有の曲線を再現し、外観に天然木のウォルナットを使用することで家具のような木の温かさがより感じられるミニピアノに仕上げました。
新しいデザインをつくるうえで苦労はありましたか?
ミニピアノにも鍵盤を弾いて音を出す仕組みであるアクション機構があります。このアクション機構は、外観が少しでも変わると本体の中に納まりよく入れるのがとても難しく、ちょっとした変化で音色も変わってしまうので、音色を考えながらのアクション機構の調整にはとても苦労しました。それでも、カワイの音色として自信を持って送り出せるように、妥協せず調整を繰り返しました。また、全体のイメージを考えミニピアノらしい煌びやかな音色を大切にしつつ木の温かさにも合うようにするために、現行モデルよりも少しやわらかい音色に仕上げています。
デザインを決める際にも、ピアノとして大切な部分は外せない、しかし現行モデルとは一味違うものをつくりたい、家具のようにインテリアとの調和も表現したい、など様々な想いをどのようなバランスで詰め込むかとても悩みました。バランスを間違えるとピアノから離れすぎてしまったり、今までと同じようになってしまったりするので、少しずつ調整しながら今回のデザインへと仕上げました。
このような苦労もありましたが、飛驒産業さんと一緒に進めていく中で今までにはない新しい発見も多くあったのでとても良い経験になりました。