今回のリビングルームコンサートは、まさにこの「夕暮れカルチャーの場」となった。
オンラインコンサートが終了した今、その役割はリアルな場へと受け継がれていく。それは「劇場」だ。
フェイスブックグループ「【非公式】小曽根真ファンの集まり」では、劇場での再会を果たすための「目印」となるバッヂも生まれた。6月20、21日、ブルーノート東京で開催された小曽根氏のライブでは、メンバー同士が各々バッヂをつけて会場を訪れ、顔合わせに成功した。まさに、小曽根氏、三鈴氏の望みが具現化した形と言えるだろう。
フェイスブックグループ「【非公式】小曽根真ファンの集まり」メンバーが、劇場での再会を果たすための「目印」となるバッヂ
「来ている人同士が仲良くなって、劇場を訪れた際にリアルに会う。そのようにして集まったお客様は、まったくの他人ではありません。コンサートを最後まで運行する、いわば『運命共同体の一員』です」(三鈴氏)
ところで、劇場は「カルチャーの場」だけではなく、いろいろなものに“変身”するという。そのひとつが自分だけの「リビング」だ。
「みなさんがチケットを買ったときから、その劇場のシートはみなさんだけの『リビング』に生まれ変わります。そんなリビングが世界中にはある。そこがどれだけすばらしい場所かを知っていただきたかったのです。だから、最後は絶対に劇場に帰ってこようと、このコンサートをはじめる前から決めていました」(三鈴氏)
小曽根氏、三鈴氏が、リビングルームコンサート最終日の会場を「自宅のリビングルーム」から「劇場」に移したのは、そんな理由があった。
撮影=小田駿一
不思議な一時の共同体は、劇場にしか存在しない
「以前、作家の井上ひさしさんがこんなことを言っていました。『劇場というのは、とても特殊な場所。いろいろなところから見ず知らずの人が集まり、音楽やお芝居を観て泣いたり、笑ったりという経験を共有し、みんながそれぞれ違う場所へと帰っていく。それぞれが、劇場で共に過ごしたという『種』を持ち帰る。不思議な一時の共同体は、劇場にしか存在しない』。だから最後はみなさんを劇場にお連れしたかった」(三鈴氏)
劇場から持ち帰った種がいろいろな場所にまかれ、やがて各地で次々と花を咲かせる。
劇場はリビングルームにもなれば、森にも変わる。300年前のロンドンやロシアにも。扉を開けた瞬間、時空を超えた世界に飛び込める。まるでドラえもんの「どこでもドア」のよう。それを楽しまない手はない。
「劇場という不思議な、愛に満ち溢れた空間をぜひ知ってほしい」と小曽根氏は言う。
53日間にわたって、のべ27万人以上の人たちを動かした小曽根氏、三鈴氏によるリビングルームコンサートは、新たなコミュニティを生み出し、コミュニケーションに新たな活路を見出した。そして、そのバトンは劇場へ。劇場は今後、新たなコミュニティの場へと進化していくだろう。
(参考サイト:小曽根真 公式・神野三鈴 公式)
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