アップルの「モビウェーブ」買収で見えた次世代のスマホ決済

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アップルがスマホを決済端末に変えるスタートアップ企業「モビウェーブ(Mobeewave)」を買収した。モビウェーブの非接触型の決済テクノロジーは、iPhoneに内蔵されたNFC(近距離無線通信)を用いるもので、新たなハードウェアを追加せずに決済を可能にする。

このニュースを最初に報じたブルームバーグによると、アップルはカナダのモントリオール本拠のモビウェーブに約1億ドル(約106億円)を支払い、エンジニアたちも獲得したという。同社の非接触型決済ソリューションを用いると、買い物をする際に相手の端末をクレジットカードでタップするだけで、支払いが完了する。

さらに、モビウェーブのアプリをインストールした端末で、別の端末をタップして決済を行うことも可能だ。アップルは2014年のiPhone 6以降の全ての端末にNFCを搭載しており、現在用いられているほぼ全ての端末が、モビウェーブの決済ソリューションに対応することになる。

同様な決済の仕組みはスクエアも可能にしているが、スクエアの場合は専用の決済ターミナルが必要だ。モビウェーブのソリューションは追加のハードウェア無しで、iPhoneを決済端末にすることが可能であり、スモールビジネスの運営者にとって非常にありがたいテクノロジーと言える。

アップルは最近になって独自のクレジットカードを立ち上げており、ここに決済ソリューションが加わることで新たなビジネスを創出できる。サムスンは既に同社のPOSアプリをインストールした端末で、モビウェーブの決済を可能にしている。

アップルが今後、モビウェーブを買い物の決済のみに用いるのか、友人同士の送金にも対応させるのかは定かではないが、米国などで導入済みの送金アプリ「Apple Pay Cash」の機能の拡張に用いられる可能性もある。また、アンドロイド端末の利用者と、iPhoneユーザー間の送金が可能になることも考えられる。

アップルはモビウェーブの買収を認めたものの、今後の計画については明かしていない。しかし、この機能の実装は、ソフトウェアの更新のみで可能であるため、ごく短期間で利用可能になる可能性もある。

ただし、アップルは金融関連の機能追加に慎重なスタンスをとっており、筆者としてはこの機能がiPhoneで利用可能になるのは、少なくともiOS 15がリリースされて以降になると考えている。

編集=上田裕資

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