ゲイツ財団は「組織文化」をこう変えた|逆境を生き抜く組織カルチャーVol.4

ミネルバ大学アソシエイトディーン グローリア・タム氏

コロナ禍によって、日本ではあらゆる面での社会変革を迫られている。企業においてはデジタル・トランスフォーメーション(DX)や人事制度改革など、早急に取り組むべき課題もある。そんな中で求められるリーダーシップとは何なのか。米国で革新的なリーダーシッププログラムを運営するミネルバ大学に協力をお願いし、日本・海外の多くの事例を知る組織・人材開発の最前線の人に話を聞く連載企画(Vol.1Vol.2Vol.3)。

Vol.4はマッキンゼーのコンサルタントとして多くのグローバル大企業やNPO、NGO組織の改革や文化構築に携わった後、現在はミネルバ大学で社会人教育のアソシエイト・ディーンを務めるグローリア・タム教授へのインタビュー(前編)をお届けする。以下、グローリア・タム教授談。


70〜80%は失敗する組織改革


約7年にわたり、Fortune500企業やNPO、NGO、政府の組織改革に携わりました。常に言い続けていることは、デジタル改革、組織再編などのなんであれ改革は「70〜80%の確率で失敗する」ということです。「変わりたい」という熱意がどれだけあっても、変化を実装できず、結果が伴わない事が大半ですいません。多くの事例を見てきた私の経験から言って、成功には2つの大きな鍵があります。

まず1つ目は、「すべては『人』にかかっている」ということを理解することです。変革はテクノロジーやツールを導入することではありません。社員の「ふるまい」や「考え方」の現状を診断すること、そしてそれと目指す「ふるまい」や「考え方」とのギャップを埋めるための計画を立てること。ここから出発することがとても大切です。

2つ目は、変革の「ケイパビリティ=実現力」です。新しい文化を築くとき、会社やブランドを変革するとき、それを実現するための力が必要です。例えば、マーケティング部で消費者エンゲージメントを向上させる自動化AIを導入する場合、最初の3カ月で変革したい方向を示し、変化に弾みをつけ持続させるためにスピード感のある成果を示すといった「ケイパビリティ=実現力」が重要になります。

変革のために新しい人材を採用する必要は、ほとんどの場合ありませんでした。もちろん、特定の専門性が必要なためにデータ分析家など新しい人材を採用することもありましたが、大半のケースでは今いるメンバー、業務やルーティンについて熟知する人達の能力をどうアップスケールしていくかでした。

例えば、カナダの銀行のDXのケースでは、窓口の社員にiPadの使い方を教えること自体に意味はなく、彼らにはiPadを携えて窓口を出て顧客に近づいていくことが求められました。なぜなら、顧客は全く異なるマインドセットを持っているからです。これは「人」のアップスケールです。大事なのは、専門家や、特定の技能を持った人材を投入することではなく、変化を通じて今いる人たちの高いモラルを維持していくことでした。
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編集=岩坪文子

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