ビジネス

2020.06.26

「WWDC20」の発表から見えた、次なるアップルの戦略

アップルCEO ティム・クック

アップルの世界開発者会議「WWDC」は新型コロナウイルス感染症の影響拡大を受けて、初めてすべてのプログラムがオンラインで開催される運びになった。基調講演で発表された最新のiOS 14とiPadOS 14、ならびにmacOS Big Surは今秋に正式リリースを迎える。それぞれの注目すべきポイントを振り返りながら、アップルのデバイスが迎えようとしている「大きな変革」を考察してみたい。

iPhoneにたまる一方の情報・アプリの整理整頓が楽になる


現在あるスマートフォンのユーザーインターフェースはアップルのiOSがルーツとも言われているが、今秋にリリースされるiOS 14はスマートフォンの画面に表示される情報の整理整頓に大胆な一手をうってきた。モバイル通信が5G時代を迎えて、これからのスマートフォンには大容量のデータを迅速にさばきながら、ユーザーが欲しい情報を素速く提供できる端末であることが求められる。

スマートフォンを使い続けていると、自然と不要なアプリが画面を埋め尽くしていく。定期的にアンインストールするのも面倒な作業だ。iOSにはアプリをグループ分けして整理するための「フォルダ」もあるが、次第にフォルダの数も際限なく増えてくる。

そこでiOS 14には「Appライブラリ」と名付けられた新機能が加わる。ホーム画面の最後のページに縦方向にスクロールするAppライブラリのページを加えて、中に「エンターテインメント」や「ソーシャル」など目的別にカテゴリ分けされたアプリを整理して並べられる。ホーム画面にできた不要なページは削除、または非表示にすればAppライブラリに素速くアクセスすることもできる。

iOS 13まではホーム画面を右にスワイプすると現れる「今日の表示」にまとめられていた「ウィジェット」機能は、iOS 14からホーム画面の中にアプリと並べて配置できるようになる。ウィジェットにはニュースやカレンダー、天気などの情報が直接表示できるので、それぞれのアプリを開く手間も省ける。

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左がiOS 14の新機能「Appライブラリ」。iPhoneにインストールしたアプリをカテゴリや用途別に自動で整理してくれる。右はiOS 14のホーム画面に組み込めるようになったウィジェット。

筆者が最も注目するiOS 14の新機能が、iPhoneにダウンロードしなくても使える“ミニアプリ”のような「App Clip」だ。App Clipの「コード」と呼ばれるタグをiPhoneでスキャニングすると、ショッピングやパーキングメーターの支払いなどコードに登録されたサービスが、都度アプリをダウンロードしなくても素速く、簡易に利用できる。そのサービスが気に入って、頻繁に使うことになった時に初めてフルサイズのアプリをiPhoneにダウンロードすればいい。かたやサービスを提供する事業者やデベロッパは、一見さんの顧客が“お試し”サービスを利用する際に必要なハードルがApp Clipによって下げられることで、常連客をつかむための新たな仕掛けを打てる。

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初めて利用するサービスを、対応アプリをダウンロードする前に手軽に試せるミニアプリ機能「App Clip」。
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文=山本敦

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