ビジネス

2020.07.01

スティーブ・ジョブズの師は「ムダに長い会議」をどうやめさせたか

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こうした報告については資料の大部分を、事前に取締役会のメンバーに送っておくといい。そうすれば取締役はそれらを検討し、最新情報を頭に入れた状態で会議に臨むことができる。取締役会でいきなり財務報告一式をスクリーンに延々と映し出せば、話題はそれに終始し、そもそも取締役会が注意を払う必要もない些末な問題を突っ込まれて、泥沼にはまりかねない。財務、業務情報はあらかじめ送付して、取締役たちが目を通し、質問を持って会議にやってくることを期待しよう。

「期待」するとは、口先だけでなく本気で期待するということだ。宿題をやらない者は取締役会に出る資格はない。

チェグのCEO、ダン・ローゼンスワイグによると、以前チェグの取締役に、毎回資料に目も通さずにやってきて、資料にあるはずの詳細を会議中にいちいち質問する者がいた。

あるときの会議で、ダンはその取締役がみんなの時間をムダにしていると、彼に嚙みついた。

その会議に出ていたビルは、そうかっかするな、あいつに資料一式を事前に送って、取締役会でどのページを取り上げるつもりか、会議までに何をしておくべきかをはっきり伝えておけばいいと諭した。

ダンはそうした。だが同じことだった。彼は準備もせずに参加し、もう知っていなくてはならないことを質問しまくって、大いに時間をムダにした。

すまん、私がまちがっていた、とビルは認めた。クビにしろ。

準備もせず賢ぶるやつは最悪


グーグルの取締役会では、ビルは業務報告に詳細な「ハイライト」と「ローライト」を含めるよう、いつもエリックに勧めた。「これがうまくいったことや満足できること」で、「これがあまりうまくいかなかったこと」だという報告だ。

ハイライトをまとめるのはいつでもわけなくできる。チームは成功事例を見栄えよく見せ、取締役会にアピールするのが大好きだからだ。だがローライトはそういうわけにはいかない。思い通りにいっていない分野を率直に認めさせるには、多少の促しが必要な場合がある。

実際エリックは、率直さが足りないという理由で、ローライトの草稿を突き返すことがよくあった。エリックは取締役会がよい知らせと悪い知らせの両方を知ることができるように、偽りのないローライトを含めるよう努めた。

信頼性の高い真のローライトを作成するには、収益成長やプロダクトの限界、従業員の離職、イノベーションの停滞などに関する率直な報告を含める必要がある。

2002年の「ハーバード・ビジネス・レビュー」の論文によれば、「敬意と信頼、率直さの好循環」が、「すぐれた取締役会を有効に機能させる」カギの一つだという。こうした率直な姿勢を通して、透明性が高く誠実な雰囲気が取締役会に醸成され、やがてそれが会社全体に浸透するのだ。

取締役会に対して正直な会社は、みずからに対しても正直だ。悪い知らせを正直に公表してもかまわないどころか、そうすることを社員は期待されている。

何がローライトかを判断するのは重要な仕事なので、財務やコミュニケーションを担うサポート部門にまかせきりにせず、実際にその事業を運営する責任者が行うべきだ。グーグルではプロダクトマネジャーがこの任に当たった。

ただし……私たちは会合に先立って取締役に送付する資料一式には、ハイライトとローライトは含めていない。それをやったら取締役たちはローライトに気を取られすぎて、会議でいきなりそこを突いてくるからだ。
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