このマイナスイメージを逆手にとった、アメリカの大手ハンバーガーチェーン「バーガーキング」の広告戦略が、世界3大広告賞の一つ「The One Show」で、最高賞の「ベスト・オブ・ディシプリン」を4つ獲得した。
その名も「The Moldy Whopper(カビの生えたワッパー)」。女性の歌声とともに、34日間かけて、バーガーキングの看板商品であるワッパーがカビに覆われる様子が映し出される動画広告は、8.4億回の表示回数を記録した。
時間の経過とともにワッパーが変形し、カビが生える様子を見せることで、「人工物を使っていない」ことを言葉で説明するだけではなく、視覚的に強くアピールしたのだ。同時期にアメリカ国内で展開された、カビの生えたワッパーの交通広告も効いたのだろう。キャンペーン後に売り上げは14%増を記録した。
同社はこのキャンペーンについて、以下のようにコメントを残している。
「世界各国で、私たちは合計8500トンの人工原材料を排除しました。1年あたり、38の自由の女神像分の量に相当します。私たちのこの動きが、ファストフード業界を変えることを祈っています」
ファストフードは体に悪い、というイメージに紐づけて、2004年にアメリカで公開されたドキュメンタリー映画「スーパーサイズ・ミー」を思い出した人も多いのではないだろうか。
この作品の中で、監督自らが実験台となって30日間連続で食べ続けていたのが、マクドナルドの商品だった。バーガーキングは以前から、業界トップのマクドナルドを巻き込んだユニークなキャンペーンで注目を集めてきた。
昨年は、マクドナルドの店舗の敷地内に入ると、アプリ内でワッパーが1セントで購入できるクーポンが付与されるキャンペーンで、The One Showやカンヌライオンズなどの広告賞を総なめにした。
味、価格、スピード以外で、どうファストフード業界で戦うか。来年以降もバーガーキングがどのような戦略で消費者を惹きつけるか、注目が集まる。