新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)により、米国では11万人以上が犠牲となり、歴史的な雇用喪失と景気後退が起きた。その結果、将来の見通しについては、遠隔勤務や消費者の旅の習慣の変化に関する話題が中心だった。
しかしこうした予想の多くで欠けているのは、パンデミック後の世界で起きるであろう、麻薬や賭博などに関連する法律の変化だ。このような変化が予想される理由は、税金にある。
地方や州、連邦レベルの政府の財政はここ数カ月で、一部地域では大きな黒字から数千億ドル(数十兆円)規模の損失への転落まで、急激な変化を経験してきた。
例えばカリフォルニア州の赤字は約540億ドル(約5兆8000億円)だ。外出規制により、経済活動は急停止した。同州は1月の時点では約60億ドル(約6400億円)の黒字が予測されていた。この他にもアリゾナ州、イリノイ州、ペンシルベニア州などが前代未聞の規模の巨額赤字に直面している。
米連邦政府の予算の赤字は4月上旬、過去最高の約7380億ドル(約80兆円)と推定されていた。この数字が現在はさらに上がっていることは間違いない。各都市や郡でも、同じような財政課題が浮上している。
こうした事態の中で、政府ができる支出削減は限られている。基本的な社会・治安・公共サービスは、提供を続ける必要がある。現実的な唯一の代替策は、収入を増やすことだ。
そこで注目されるのが、新たな税金の収入源だ。
賭博や娯楽用の麻薬の合法化を拡大することが、論理的なステップとなる。これについての議論を以前はためらっていた地域でも、議員らは間もなく妥協を余儀なくされるかもしれない。
米国ゲーミング協会(AGA)によると、海外を拠点とするオフショアのスポーツ賭博や街中で規制をかいくぐって行われている賭博の賭け金年額は約1500億ドル(約16兆円)に上る。これは、潜在的な課税収益として非常に大きい。
この実現可能性を疑っている人は、歴史を振り返ってみてほしい。米国では1920年から30年代まで10年以上にわたり禁酒法が制定されていたが、そこで世界恐慌が到来した。議員らはすぐに、酒類を合法化することで政府がまとまった税収入などのメリットが得られることに気づいた。
現代の社会では、こうした解禁措置がどれほど進むだろうか? それは分からないが、はっきりしているのは、政府の債務を解消するための新たな収入源が緊急に必要とされているということだ。