マンハイムは世界最大の自動車オークションの運営元として知られ、年間数百万台の車両を掲載している。同社は1995年から中古車の卸売価格の推移を、Used Vehicle Value Index(中古車価格インデックス)という指標にまとめている。
2020年4月の中古車価格は3月から11%以上の下落となり、単月では過去最大の落ち込みとなった。これに匹敵する落ち込みが確認されたのは金融危機が起きた2008年で、当時は3カ月にわたり今回と同レベルの下落が発生していた。
新型コロナウイルスの感染拡大は失業者の増加を招き、人々の移動を制限したことで、中古車市場に大きなダメージを与えた。しかし、2008年の金融危機と比較すると、今回のコロナ危機後の市場の立ち直りは早かった。
5月に確認された9%の上昇によって、4月の中古車価格の落ち込みはほぼ相殺されており、現状の価格水準は昨年をわずかに下回るレベルまで回復した。
ただし、販売台数のボリュームはまだ回復していない。5月の中古車の販売価格は前年比でわずか2%のマイナスだが、売上は約30%の下落となっている。
しかし、興味深いことに、売上の落ち込みは在庫数の上昇にはつながっていない。マンハイムの試算では4月の小売り向け中古車の在庫数は通常時を161%上回っていたが、5月には平均を25%下回る水準となっていた。これは中古車の買い手が減ったことにより、供給台数が減少したためと考えられる。4月から5月にかけての新車の売上も、これと類似した推移をたどっていた。
一方で、新型コロナウイルスの影響を特に強く受けたのが、レンタカー企業だ。レンタカー企業は主に新車を購入し、顧客に貸し出しているが、マンハイムによると今年5月のレンタカー企業向けの新車の売上は前年比で91%の落ち込みになったという。
レンタカー大手のハーツ(Hertz)は5月に経営破たんを宣言したが、その主要因にパンデミックによる売上の急減をあげていた。一部の報道によると、ハーツで使用されていた整備状態の良いBMWの7シリーズの中古車が現在、市場の平均価格を13.7%も下回る価格で入手可能になっているという。
しかし、中古車市場の回復が6月も続くのであれば、これほど割安な中古のBMWが入手できるチャンスは、もうやってこないだろう。