アプリを利用していて新型コロナウイルスの陽性が判明した場合は、本人が陽性になった旨をアプリに入力する。それから接触歴があった人に接触者アラートが通知される。この時、誰が陽性者かを特定できる情報は表示されない。接触アラートを受けた人は、濃厚接触者として適切な行動や帰国者・接触者相談センターへの相談方法についてのメッセージを受け取る。
陽性者の登録は、厚生労働省で別途開発が進んでいる、新型コロナウイルスの感染者情報のデータ管理システム「HER-SYS」で保健所が管理する。接触アラートを受け取った人は、自ら「接触確認者」として帰国者・接触者相談センターに相談した上で、場合によって「HER-SYS」に保健所側で濃厚接触者として登録することになり、陽性者と接触した個人を把握できるようになる。
アプリのデータが利用できるのは14日間までで、その後は削除される。このアプリの基盤となっているAPIは、グーグルとアップルがパンデミックの間だけ提供するとしているので、パンデミックが終わればアプリ自体も動かなくなる。
個人情報保護に重点を置き、諸外国と比べてプライバシーのリスクを最小限にしている。例えば、シンガポールやオーストラリアは「中央サーバ処理型」で、電話番号や個人情報を取得し、当局が接触者を特定して連絡するが、日本はドイツやスイスのように、スマホ端末で情報を管理し、位置情報や電話番号のような個人に紐づく情報は取得しない。
5月8日 新型コロナウイルス感染症対策テックチーム会合資料より。日本は一番下、プライバシー影響度がもっとも小さいカテゴリになる。
──強制力がなく個々人の自発的な登録や入力に頼っていますが、そもそも感染症対策として本当に有効なのでしょうか。
プライバシー保護を重要視し、人々の自由意思による行動変容に頼っている。保健所による濃厚接触者の追跡にも、自己申告しなければ使えない。感染拡大防止という観点での効果は限定的かもしれない。
コンタクトトレーシングアプリには、一般に3つの目的が考えられる。①アラートを受けた人が自らの行動を変容する、②保健所(公衆衛生当局)が濃厚接触者を把握する、③施設や地域への立ち入り制限、感染者の隔離──だ。
検討会でも議論したが、今回はあくまで①の行動変容が主な目的だ。②の保健所による濃厚接触者の把握についても、保健所の方から連絡を取りやすくすることで対応した。③は今回の目的としていない。
今後、再流行が起きたときに、備えて「接触確認アプリ」だけでどこまで感染防止に役立つのか、継続的に検証が必要だ。