経済・社会

2020.06.14 18:00

米国の子どもの貧困、州・地域で異なる保護状況

Photo by Spencer Platt/Getty Images

米国各地には、「心配のない安定した暮らし」を送ることができない、恵まれない子どもたちが数百万人も存在している。2018年には1100万人以上の子どもたちが、食べものを十分に確保できない家庭で生活していた。また、15歳から19歳の少女が出産した子どもは18万人に上った。同じ2018年、1歳の誕生日を迎える前にこの世を去った乳児は2万1467人。そして5700人の子どもたちが、死亡または自殺している。

国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン(Save the Children)」によれば、米国の子どもたちの運命を決めるのは居住地だ。同団体は2020年6月2日、米国の州と郡別に子どもの保護状況を分析し、ランク付けした報告書を発表した。

この調査では、米国の全50州2600郡から収集したデータを検証。着目したのは、子ども時代を破滅的状況に導く「栄養不良」「不十分な教育」「10代の妊娠」「健康障害や事故、殺人、自殺による早死」の4つだ。

子どもの貧困は一般的に、都市が抱える問題だと考えられている。ところが、大多数の子どもたちが飢えに苦しむ郡の84%は、貧困率が高い地方に位置している。10代の妊娠率について上位の郡のうち59%、子どもの死亡率について上位の郡の54%も、地方にある貧困率の高い地域だった。

セーブ・ザ・チルドレンが分析した2600郡のうち、ランキングで下位に並んだのは圧倒的に地方にある郡で、南部に集中しており、有色人種が住む貧しい地域だった。最も恵まれない郡に住む子どもたちの死亡率は、ランキング上位の郡に住む子どもたちの死亡率の5倍だ。また、10代の妊娠率は26倍にもなる。子どもたちが飢えに苦しむ割合は3倍で、学校を中退または留年する可能性は14倍だ。

州別に見ると、ニュージャージー州、マサチューセッツ州、ニューハンプシャー州の子どもたちは、ルイジアナ州、ミシシッピ州、ニューメキシコ州の子どもたちよりも、安全で健康的な暮らしを送っている傾向がかなり高い。

2018年に前回の報告書が公表されて以来、順位を最も大きく上げたのはモンタナ州で、10ランク上昇した。逆に、最も順位を下げたのはカンザス州で、9ランク下落した。1歳未満で死亡する子供の割合が最も高かったのはミシシッピ州で、新生児1000人中8.5人が死亡。全米平均の5.6人を大幅に上回った。

安定して食事ができない子どもの割合が最も大きかったのはニューメキシコ州とアーカンソー州で、それぞれ24.1%と23.6%だった。アーカンソー州は10代の妊娠率も最も高く、全米平均の2倍近い。

さらに、米国では2016年から2017年の学年度で、卒業できなかった高校生は15%に上ったが、ニューメキシコ州ではその割合が28.9%と全米で最大だった。

2020年、州別に見た子どもの優先指数・保護指数(0=最優良)


順位:州(集計値)
1位:ニュージャージー(4.2)
2位:マサチューセッツ(4.8)
3位:ニューハンプシャー(5.4)
4位:コネチカット(8.2)
5位:アイオワ(10.6)

46位:アーカンソー(39.2)
47位:オクラホマ(40.0)
48位:ニューメキシコ(42.0)
49位:ミシシッピ(44.8)
50位:ルイジアナ(46.2)

※子ども時代を破滅的状況に導く「栄養不良」「不十分な教育」「10代の妊娠」「早死」の4指標を基に集計

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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