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ミュージシャンのブライアン・イーノ。写真=Getty Images

新型コロナウイルスの影響で、人との物理的な距離感、コミュニケーションの仕方が変わるなか、「いかに人間関係を育むか」は、この先の大きな論点のひとつだろう。 4月25日発売のフォーブス ジャパン6月号では「新しい師弟関係」に焦点を当て、全55組の師弟を紹介。本誌掲載記事から一部抜粋でお届けする。


人工知能(AI)の研究者で、AIとの共創による音楽表現に取り組む、Qosmo代表取締役の徳井直生。実験的環境音楽の第一人者であるブライアン・イーノのミュージックビデオの制作を手がけた際、イーノの考え方に触れ、それ以来彼を心の師と仰ぐ。イーノの音楽との出会い、そして憧れの本人との邂逅を、徳井が振り返る。

徳井:学生の頃、勉強するときに集中で きる音楽を探していて、イーノのアンビエントミュージックに出会いました。やがて彼の著作物やインタビューにも目を通すようになり、徐々に彼の哲学に惹かれていきました。

彼は自分の音楽制作のことを「園芸」や「造園」と言う。タネは蒔くけれど、そこからどういう音楽が生まれてくるかは「自然」(予め緩やかに決めたルール)に任せ、そこで育ってくる音楽を選別するのがアーティストとしての自分の役割だと言うのです。そうすることで「自分の創造性の一歩外側を探ることができる」と。

僕はAIと人間の創造性について研究していますが、まさに彼の言うことが当てはまる。AIにある程度任せることで、人のモノマネではない創造性が得られるのではないかと考えているからです。

2016年には、イーノ本人にお会いすることができました。アルバム『THE SHIP』のミュージックビデオを、AIを使って制作するというプロジェクトに、僕自身が携わることになったのです。 



食事を共にし、世界的音楽家の紳士的な一面にも触れて感激しましたね。その後も何かと関わりを持たせてもらっています。

イーノは僕にとって、自分の研究や制作にインスピレーションを与えてくれる存在です。同時に、勝手に“人生の師”だと思っています。

彼は創造性について「サーフィンのように適度に流されている状態、受動的な状態が一番創造的な状態」と述べています。人生も、彼の言うように適度に流されるくらいが、未来像を描くのが難しいいまの時代にはちょうどいいんじゃないかと思うんです。

イーノが僕に間接的に与えてくれたような影響を、自分の研究室の学生や会社のメンバーに与えられたらと思いながら、日々を過ごしています。

そのほか、マネーフォワードCEO辻庸介、マクアケ代表取締役社長の中山亮太郎、作家の辻仁成から政治家野田聖子まで、全55組の師弟関係を一挙公開。フォーブス ジャパン2020年6月号は現在、好評発売中! ご購入はこちらから。

 
徳井直生◎1976年生まれ。慶應義塾大学 SFC准教授。東京大学工学系研究科博士課程修了。2009年にQosmo設立。19年よ りDentsu Craft Tokyoのヘッドを務める。

ブライアン・イーノ◎1948年、英国生まれ。75年にアンビエントミュージックの概念を提唱。音楽理論家、プロデューサー。弟ロジャーとのデュオアルバム『ミキシング・カラーズ』を3月に世界リリース。

文=山本真由

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