ハンガリーのLCC、ウィズエアーのヨージェフ・バーラディ最高経営責任者(CEO)は4月22日のイベントで、アブダビに拠点を置く「ウィズエアー・アブダビ」について「当初の計画よりも早く立ち上げようと努力している。規模も大きくなる」と述べた。
ウィズエアー・アブダビは、ウィズエアーとアブダビの国有企業ADQが設立準備を進めている。バーラディは「現時点では(アブダビに)ほとんどないニッチなサービスを持ち込みたい」と意欲を示す。
一方、UAEシャルジャに本拠を置くLCC、エア・アラビアは4月23日、アブダビが拠点の「エア・アラビア・アブダビ」が事業許可を取得し、アブダビ就航が可能になったことを明らかにした。
エア・アラビア・アブダビは、アブダビに本拠を置くエティハド航空とエア・アラビアの合弁企業。ドバイのエミレーツ航空とLCCのフライドバイのように、エティハドのフルサービス事業をエア・アラビアのノーフリル(簡素化された)事業で補完する狙いから設立された。
この時期に新しい航空会社の立ち上げや就航を進めるのには違和感を覚える人もいるだろう。国際航空運送協会(IATA)によると、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて今年の旅客収入は前年比3140億ドル(約33兆5500億円)減少し、業界全体で2500万人が仕事を失う恐れがある。
中東でも好調だったLCCだが…
中東でも旅客数は51%減、旅客収入は240億ドル(約2兆5600億円)減と予測されている。IATAの見通しではUAEはサウジアラビアに次いで大きな打撃を受け、旅客数は3100万人減、旅客収入は68億ドル(約7300億円)減るとされている。
ウィズエアー・アブダビもエア・アラビア・アブダビも、事業開始がいつになるかはまだ発表していない。エア・アラビア・アブダビは、市場の改善をにらみながら、UAEの民間航空総局(GCAA)と緊密に協力してその時期を調整していく考えを示している。
エア・アラビアのアデル・アリCEOは「空と空港が開かれ、顧客が再び航空機に乗れるようになればすぐ」開始する準備を整えていると強調する。UAEの空港は最近も航空機の発着があるが、大半は貨物便か、外国に留め置かれた人らの送還便となっている。
両社の設立は新型コロナウイルスの感染拡大前に構想されたもので、現時点では航空産業がこの危機をどのように克服するのかも、この危機を経て一変することになるのかも見通せない。
危機前には、LCCモデルは中東でも好調だった。昨年10月にエア・アラビア・アブダビの設立計画が発表された際には、中東発着便の座席数に占めるLCCの割合が2009年の8%から2018年に17%に増えたことも言及されていた。
だがIATAのアレクサンドル・ドジュニアック事務局長は4月21日の記者会見で、「ウイルスの拡大を抑えるための厳格な措置が緩和されたとしても、航空業界の抱える問題が魔法のように消え去るわけではない」と警告。IATAの調べでは6割の人は比較的早く航空機の利用を再開する意向であるものの、残りの4割の人はおそらく半年以上利用を控えると答えていると指摘している。