グーグル・ペイでは現在、従来の決済用カードを登録した上でのオンライン決済と個人間の支払いのみが可能だ。グーグルが独自のカードを発行することで、グーグル・ペイは大幅に普及し、同社は成長分野であるフィンテックで主要プレイヤーとしての地位を確立するだろう。
テクノロジー企業は、以前から電子決済への参入を検討してきた。電子決済が社会の中でかつてなく大きな役割を果たすようになっている中、銀行主導の改革努力はそれに追い付いておらず、電子決済の仕組み作りにおいてはテクノロジー開発に特化した企業が主導権を強めている。テック企業がさまざまな形でトレンドを生み出している一方、銀行の対応は順応努力にとどまり、多くの場合は大きく遅れを取っている。
新型ウイルスの流行終息後の世界では、硬貨や紙幣が新型コロナウイルスなどの病原体を媒介することを恐れ、現金のやり取りを拒否する人や組織が増えることは間違いない。それにより、電子決済の分野で地位を確立することの重要度は増すだろう。今は、ユーザーの習慣や嗜好の中心的位置を確保する絶好のチャンスなのだ。実際に一部の人々は、米国で広く普及しているペイパル傘下のVenmo(ベンモ)、あるいはZelle(ゼル)、Swish(スウィッシュ)、M-PESA(エムペサ)のような形での電子決済を実現する公営システムの開発を呼び掛けている。
新型ウイルスの流行終息後にキャッシュレス化が進む見通しとなった今、スウェーデンでしばらく前から行われているような大規模な仮想通貨実験を実行し、新たな習慣を導入するチャンスが生まれている。その中で、アップル、グーグル、アマゾン・ドット・コムなどのキャッシュレス店舗を持つテック大手は重要なプレイヤーとなることだろう。
これは、コモディティー化が一層進む銀行にとって非常に難しい課題となる。