新型コロナ対応に苦慮する国々とGDPに占める医療費の割合

Photo by Marco Mantovani/Getty Images

3月31日、ドナルド・トランプ大統領の医療担当上級顧問らは、米国内の新型コロナウイルス感染症による死者が10万~24万人に上るとの見通しを発表した。これは厳しい社会的距離措置を継続した場合の数字で、そうした措置を実施しなければ、死者数は150万~220万人に跳ね上がると予想されている。

現在までにもっとも大きな被害を受けているイタリアとスペインでは、死者数は記事執筆時点でそれぞれ1万2428人と8464人に上っている。皮肉なことに、ここで名前を挙げた3か国はどれも、OECD(経済協力開発機構)のデータによれば、世界トップレベルの医療投資大国だ。

現在のパンデミックでとりわけ気がかりな状況のひとつが、世界屈指の優れた医療システムがこの感染症に圧倒され、崩壊状態に陥っていることだ。OECDがまとめたリポート「図表で見る医療(Health at a Glance)」の最新版を見ると、世界最悪レベルの状況に置かれている国々が、自国の医療分野に毎年どれくらいの金額を注ぎ込んでいるかがわかる。

このリポートによれば、2018年に米国が医療システムに費やした金額はOECDの全加盟国中最多で、GDPの16.9%に相当する。購買力を考慮して調整すると、金額は1人あたり1万ドルを超える。

北イタリアは全般的に見て、世界的に非常にすぐれた医療システムがある地域とされているが、イタリアで生じた大規模な新型コロナウイルス感染症の流行には対応できなかった。その大きな原因は、人工呼吸器の圧倒的不足とICUのキャパシティ超過にある。イタリアの医療費は、GDPの8.8%に相当する。スペインも同程度だが、その割合はイタリアよりもわずかに大きく、GDPの8.9%だ。

韓国の医療費水準もおおむね同じくらいだが、GDPに占める割合は8.1%とやや小さい。ソウルで徹底した検査、隔離、追跡の取り組みが迅速に行われたおかげで、韓国は他国が経験しているような窮地に陥らずに済んでいる。2020年4月1日現在で、韓国の新型コロナウイルス感染症による死者は165人にとどまっており、新たに確認される感染者数もおおむね安定している。

2018年のGDPに占める医療費の割合


米国 16.9%
フランス 11.2%
ドイツ 11.2%
英国 9.8%
スペイン 8.9%
イタリア 8.8%
韓国 8.1%
トルコ 4.2%

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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