SkyDrive代表の福澤知浩
日常がちょっとよくなる。そういうものづくりが好き。
SkyDriveが法人化する前は、自動車メーカーや航空会社などさまざまな企業に勤めるエンジニアを中心とした社員が集まり、2012年から有志団体「CARTIVATOR」として活動していた。
大手のメーカーでは業務が分業化されているが、、「企画からデザイン、実際の開発面まで、車づくりに一貫して携わるような仕事をしたい。ならば自分たちで作ればいいのではないか」との思いをもったものづくりが好きなメンバー100人程が集まっていったという。
有志メンバーは普段は会社勤めをしている。空き時間や週末を使って活動し、時間を有効に使うためにシェアハウスをしていた時期もあるというから驚きだ。
実は最初から「空飛ぶクルマ」の開発が決まっていたわけではない。開発を決定するまでに1年ほどアイディアを出し合った。地下を掘る車、2階建てになるもの、水中も走れるもの、着せ替えができる車……。100個ほど出たアイディアの中の1つが空飛ぶクルマだった。
その理由について、福澤は「あったら一番面白いな、と純粋に思ったからです。初めて三輪車に乗った時とか、初めて自転車に乗った時とかって世界が変わる、みたいな喜びってあるじゃないですか。案出しをする中で実際にハンググライダーに乗って空を体験してみると、そういう喜びが空にはある、と感じたんです。しかも楽しくて早く移動できるようになったら最高じゃん、となって空飛ぶクルマの開発を決めました」と語る。
もともとトヨタ自動車に勤めていた福澤。調達部の社員として、自動車づくりの現場改善に取り組んでいた。実際に工場に赴き、より効率よく安く仕事を行うための工夫を考える日々。ものづくりが好きな福澤は、その仕事にどんどんはまっていき、個人で製造業のコンサルティングを始めるようになる。
「例えば製造業の中小企業の経営者って意外とものづくりのこと詳しくなかったりするんですよ。逆にものづくりに詳しくても営業に弱かったり、そのどっちかで。その反対側のほうをサポートするだけで全然会社が変わってくるんですね」
仕事をする中でものづくりに携わる人々と出会い、彼らのものづくりに尽くす情熱や面白さに惹かれていく。そういう人たちと働くのは面白いんじゃないか、とトヨタ自動車の若手社員としては珍しく会社から独立した。
26分の1サイズの空飛ぶクルマコンセプトモデル
福澤は当時の心境をこう振り返る。「車はまあまあ好きくらいだったんですけど、ものづくりがやっぱり好きで。日常にあって、多くの人の日常生活を豊かにする、みたいなものが好きなんですよ。新しい家電を買っただけで生活が変わったりすることってあるじゃないですか。そういうものがあったらすごく世界に対していいインパクトを与えられるなと思うんですよね」
空飛ぶクルマで実現したいのは、移動の効率化もさることながら、移動すること自体の楽しさを提供することだ。空からこれまでとは違った景色を見ることができたり、少しでもストレスが軽減されたり。福澤が目指すものづくりは、生活の不便さを解消し、その分豊かさを感じることができるようになるものだ。