9110万ドル(約100億円)の落札価格を記録した「ラビット」はじめ、彼の代表作と経歴を紹介する。
史上最高価格、100億円の「ラビット」
2019年5月15日、現代美術家ジェフ・クーンズの彫刻「ラビット」が9110万ドル(約100億円)で落札された。これは、存命する芸術家としては史上最高価格となる。
LAの「ザ・ブロード」でも展示された「ラビット」
「ラビット」はステンレススティール製の彫刻で、80年代のアメリカの大衆文化を象徴するプレイボーイを表現。「ラビット」を落札したのはアメリカ財務長官スティーブン・ムニューシンの父で美術商のロバート・ムニューシンだが、顧客のために購入したと述べており顧客は明らかになっていない。
ジェフ・クーンズの経歴
ジェフ・クーンズは、1955年アメリカ・ペンシルベニア州生まれ。スペインの画家、サルバドール・ダリに憧れ、10代の頃にニューヨークの「セントレジスホテル」に滞在していたダリを直接訪ねたこともあったという。
シカゴ美術館附属学校で絵画を学んだのち、メリーランド美術大学大学院を修了。学生時代にポーランド系アメリカ人画家エド・パシュケと出会い、アトリエでアシスタントとして働いた。
77年にニューヨークに移り、ウォール・ストリートの仲買人として生計を立てながらアーティスト活動を開始。85年にグループ展「ネオ・ジオメトリック・コンセプチュアル・アート」の中心的な芸術家として評価を受ける。
その後、ニューヨークのソーホーに工場規模のスタジオを設立し、次々と作品を発表。2014年、ホイットニー美術館で開催された回顧展では、当時の同館過去最多の動員数を記録した。
ジェフ・クーンズの代表作
ポップカルチャーを主題としたクーンズの代表作として、「ラビット」を始めとする鏡面処理を施したステンレススティール製の彫刻作品が挙げられる。1986年に「ラビット」、94年に「バルーン・ドッグ」を発表。80年代アメリカの大衆文化を象徴し、鏡面に作品を見る人を映し出す作風が評価された。
92年に制作された彫刻「パピー」は、高さが13mという巨大な作品。クロムステンレス鋼製で作られたウェスト・ハイランド・ホワイトテリア犬に、マリーゴールドなどの花が装飾されている。
現在はスペインのバルビオで鑑賞することのできる「パピー」
「パピー」は画商の依頼で、ドイツのアーロルゼン城での展覧会のために制作された。95年にシドニー現代美術館などの共同ベンチャー事業で解体、内部に人工的に水を供給する灌漑システム電機子を備えるなどして、より長持ちするよう再構築された。
2000年の夏にはニューヨークのロックフェラーセンターの展覧会で展示され、現在はスペインのバルビオにある、グッゲンハイム美術館の入り口正面に設置されている。
その他のジェフ・クーンズの代表作
その他、1988年に制作された、マイケル・ジャクソンとペットのサルなどをモチーフとした金箔メッキ製の陶器像「マイケル・ジャクソンとバブルス」なども代表作として挙げられる。
また、2007年ニューヨークの百貨店メイシーズのサンクスギヴィング・デイ・パレードでは、全長15mの巨大なウサギのバルーンアートが使用された。
17年には、ルイ・ヴィトンとのコラボレーションも話題を呼んだ。ダ・ヴィンチやゴッホの名画をハンドペイントで再現した作品「ゲイジング・ポール・ペインティング」がモチーフに作られ、パリのルーヴル美術館でレセプションが開催された。
ルーヴル美術館で開催された「LVxKOONS exhibition」