テクノロジー

2020.03.21 16:30

医師向け音声アシスタントで注目のスタートアップ「Suki AI」

wavebreakmedia / shutterstock.com

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医療現場の最前線で働く医師たちを悩ませるのが、煩雑な診断カルテの作成作業だ。詳細な診断データをタイピングする作業は、莫大な時間を要するが、この状況を変えるスタートアップ企業が、米国の「Suki AI」だ。

同社の創業者兼CEOのPunit Soniは、医師向けの音声アシスタントを開発し、医療現場に革命を起こそうとしている。Suki AIは先日のシリーズBラウンドで2000万ドルの資金を、Flare Capital PartnersやFirst Round Capital,、Venrockらから調達した。

2017年設立のSuki AIの累計調達額は4000万ドル(約43億円)に達した。

Sukiのソフトウェアは、アマゾンのアレクサと同様な機能を医師向けに提供する。患者とのアポイントメントを記録し、診断内容をその場で電子医療記録(HER)として保存できる。医師たちは煩雑な業務に注ぐ時間を減らし、患者との対話に専念できる。

カリフォルニア州レッドウッドシティ本拠のSukiは、昨年のフォーブスの「AI 50」にも選出されていた。今回の調達資金で従業員数を現状の50人からさらに増やし、新たなソフト開発を進めていく。

創業者のSoniは、モトローラやグーグル、インドのEコマース企業Flipkartで勤務した経歴を持つ。Sukiの企業価値は昨年秋に実施したシリーズA資金調達の際に、6500万ドルとされていた。

医師たちは、Sukiのアプリを自身のスマホやデスクトップにダウンロードして使用する。そして、ソフトに話しかけるだけで、カルテを記録したり、患者の診断履歴を確認することができ、処方箋の発行も可能だ。診断を終えたら、データは自動的に電子カルテにまとめられる。Sukiのデータはアテナヘルスや、Epic、Cernerなどの医療業務ソフトと連携可能だ。

この分野の競合企業としては、医師向けの音声アシスタントを開発するSaykaraやRobin Healthcare、Voceraなどがある。しかし、Sukiはハードウェアでなくソフトに特化することで優位性を保てるとSoniは説明した。

「当社はこの分野で唯一の、純粋なソフトウェア企業だ」とSoniは話す。それにより大幅なコストの引き下げが可能になったという。他社の医療向け音声アシスタントの運用コストが、年間6万ドルから8万ドルであるのに対し、Soniのソフトは月間200ドル程度で利用可能という。

グーグルとも正式なパートナーシップを締結


ただし、Sukiのソフトは課題も抱えている。医療データは非常にセンシティブな個人データであり、取り扱いには厳重な注意が必要になる。Soniはグーグルに8年間勤務した経歴を持ち、グーグルクラウドとも正式な提携を結んでいる。さらに、Sukiは医療データの取り扱いで世論の厳しい非難を浴びたグーグルのヘルス部門、Ascensionとも共同事業を進めている。

Soniによると、Sukiは個人データの取り扱いには厳重な注意を払っており、Ascensionの問題とは無関係だという。同社のソフトウェアはアレクサのように、常に会話に聞き耳を立てている訳ではない。医師がコマンドを発した場合のみ、記録を開始するという。さらに、同社のソフトは米国のHIPAA基準を満たしている。

Sukiのソフトは現状で米国の約85カ所の医療施設で使用されている。「過去1年間ほどの間で、利用頻度は40倍にも伸びた。小さなスタートアップ企業にとっては、非常に意義深い成長を果たしている」とSoniは続けた。

編集=上田裕資

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