近づく「インドの時代」 フィンテック分野で日本に好機

現在、インドには1万以上のテック系スタートアップが存在する。また年間約260万人の科学、技術、工学、数学を収める大学生がいるため、グーグル、フェイスブック、アマゾン、インテル、マイクロソフトなどの評判の高いハイテク企業にとっては人材の宝庫であり、グローバルなR&Dセンターとなっている。

それは、オープンイノベーションに力を入れる日本企業にとっても同様だ。これまで伝統的に、技術、製品、サービスの開発をすべて独力で行ってきた日本企業も、デジタル化やIT化の大きな波を受け、グローバルな競争力を維持するためにスタートアップとの協業や戦略的投資を進めている。

IT大国であるインドと日本のコラボレーションにはどのような可能性があるのか。駐日インド大使やデロイトトーマツグループの担当らに話を聞いた。

インドと日本には相乗効果と補完性が


現在日本は、IoT、ロボット、人工知能(AI)、ビッグデータなどの新しいテクノロジーに焦点を当てた取り組み「Society 5.0」によって、サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合する超スマート社会をめざしている。

同様にインドでも、「Digital India」「Smart City」「Start-up India」などの政府のプログラムによって、社会のイノベーションと生活の暮らしやすさの促進を進めている。

2018年10月、インドのモディ首相の訪日の際に包括的な「インド日本デジタルパートナーシップ」(I-JDP)が開始され、すでにスタートアップや企業パートナーシップ、エレクトロニクスエコシステムなどの相互に有益な分野での取り組みが進行しているが、インドと日本の両国間には、多くの相乗効果と補完性がある。

サンジェイ・クマール・ヴァルマ駐日大使は、「デジタル化やIT化は、インドと日本の関係においてはとても重要な分野です。インドはITセクターの世界的リーダーであり、日本は基礎科学、エレクトロニクス、製造に強みを持つ。つまり、インドはソフトウェアが、ものづくり大国である日本はハードウェアが得意。両国の異なる利点を掛け合わせることは、デジタル領域でかなり重要な成果を生むことになるでしょう」と話す。


サンジェイ・クマール・ヴァルマ氏と筆者

「インドの時代」がやってくる


スタートアップ分野において、インドは世界で3番目に大きなユニコーン輩出国である。2014年には4社だったユニコーン企業は、5年後の2019年には6倍の24社に増加し、合計評価額が約1000億ドルとなった。

この勢いは今後も続くと予想されているが、現在注目されているIT系以外にも、ディープテックスタートアップの増加も見込まれている。確実に、多くの理系人材を抱え、起業家精神も強いインドの時代がやってくるのだ。これは連携を図ろうとしている日本の企業にとっても大きなチャンスとなる。
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文=森若 幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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