それによると、羽田空港は全空港職員がマスクをし、利用客も7割がマスクをしている。東京からのユナイテッドの機内でも、客室乗務員は人種を問わず全員がマスクを着用している写真が載っている。
ところが、アメリカの空港に着いた途端にマスク着用率は一気に2割にまで下がり、ラスベガス行きの飛行機に乗ると、150人の機内でマスク着用者は1人となり、客室乗務員ではゼロだ。「ラスベガス大全」の取材に答え、ユナイテッドの国内線のスタッフは、「マスクを着用しての勤務は職場のドレスコードに反するので」と答えたという。
実は、筆者もSARSが蔓延したときに、シカゴ空港で乗り継ぐ出張をしなければならない時があった。死亡率10%のSARSで、人混みの空港のなか、当然マスクをしていたのだが、周りに着用している人はいなかった。私が待ち時間に仕事をしていると、隣りの席にやってきたアメリカ人は、しばらくして筆者のマスクに気がつき、パソコンを畳んで黙って立ち上がり、去っていった。
郷に入れば郷に従えという諺もあるし、周りに不快な思いを与えるのは誰も好むところではない。しかしどう考えてもWHOが非常事態宣言まで出した新型コロナウイルスに対して、マスクもせずに人混みを歩いていくということを、文化的妥協との二者択一で迫られるのだとしたら納得できない。しかも、いきなり暴行を加えられることさえあるのなら、その判断はとても難しい問題であると考えさせられた。
ちなみに、日本人が信じていてアメリカ人が信じていないものはまだまだある。たとえば磁力の健康器具の磁力で肩こりをほぐすという仕組みは、日本ではモノによっては厚生労働省に認められた健康器具であり、普及しているが、アメリカの保健福祉省は一切これを認めていない。
もっと言えば、漢方薬を試してみるアメリカ人がたくさんいる一方で、西洋医学はこれを認めず、通常の医薬品流通経路では入手ができない。あんま、鍼灸なども、ライセンスで管理されているものの、レクリエーショナルマッサージとして合法でも、医療行為としては一切認められていないので、保険が全く効かない。
グローバル社会などと新聞は簡単に書くが、文化に挟まれた深い河はまだまだそこら中に流れている。世界中のすべての罹患者の1日も早い回復と、亡くなった方のご冥福を心から祈りたい。
連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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