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2020.02.28 08:00

「陸上の港」が物流の世界にもたらす革新|トップリーダー X 芥川賞作家対談 第2回

左:吉田孝美|右:上田岳弘


上田:最近の異常気象で、「災害に強い物流システム」の構築が国を挙げての課題にもなっています。港湾に比べ、内陸は災害が少ないという利点もあるのでは?
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吉田:そうですね、港湾は「津波、災害の恐れがあるぞ!」となると、ゲートを閉めてしまいます。そこへ行くと内陸のインランドデポは自然災害のリスクが低く、安定したサービスを供給できるという利点があります。

──内陸港は「CO2削減」にも貢献している。それまでは、港から荷下ろしする場所まで70キロ分のCO2を排出して走行し、帰り道、空気を運んで、また70キロのCO2を排出し走行していた。それが、同じCO2排出にしても片道分「輸送」をしながらなので、企業のCSR的にもいい。そればかりか、港湾でコンテナ返却のために待機している間のアイドリングによるCO2の削減にも貢献している。──

吉田:実は、弊社は実際にCO2排出削減事例の申請をしようとしたんです。申請コストが高くてあきらめましたが。
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ドライバー採用の「風景」も変わった


上田:最近、女性ドライバーを5名、採用されたとうかがいました。

吉田:内陸港は、ドライバーの労働負荷を大きく減らすことにもつながりました。港はものすごく混雑すると冒頭にお話ししましたが、3〜4時間も運転席に座ったまま待機するのが常識の海上コンテナの業界では、女性ドライバーが活躍できない。トイレの問題がありますから。だって、巨大なコンテナトラックを気軽に駐車して、コンビニでトイレを借りたりできないでしょう。でも渋滞地域に行って並ばず、インランドデポと納品先との間の走行だけであれば、女性でも働けるんです。

上田:労働環境に自分を合わせていく必要がなくなった。



吉田
:そうです。そういえば面白いこともあって。女性ドライバーが納品先の倉庫に行ったとき、いつもの男性担当者が、「オーライ、オーライ」と声をかけて誘導してあげてたんです。男性ドライバーには決してそんなことはしない(笑)。

また、ちょっとのトラブルも、女性ドライバーだとトラブルにしないで収めて帰ってきたりします。これから女性の海コンドライバーが増えてくれば、この業界の文化自体、かなり変わると思いますね。

──また、これまでは川上から川下までの長時間労働が前提だった海コンドライバーに「パートさん募集」で仕事を切り出せるようになったので、引退した高齢のドライバーが「午前中だけ」といった単位で仕事できるようにもなったという。まさに、内陸港が起こした採用風景の変化である。──
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文・構成=石井節子 写真=帆足宗洋 サムネイルデザイン=高田尚弥 作図=福田由起子

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