今から数年前までは、中国のテック企業の大半は海外では無名だった。例外としは、中国で巨大なファンベースを確立し、インドでもスマホ市場のリーダーとなったシャオミが挙げられる。
しかし、中国企業はこくわずかな期間でテクノロジーを進化させ、グローバルで知名度を誇るようになった。筆者は先日、ジャマイカで開催されたテクノロジーのカンファレンス「Tech Beach Retreat」でモデレーターを務めたが、会場を埋めたカリブ海諸国の起業家の多くが、中国のテック企業を意識していた。
ただし、ここ最近は中国のテック企業に対し、厳しい目が注がれるようになった。15秒のショート動画をシェアする中国企業のアプリ「TikTok」は世界中の若者に愛されいるが、動画の検閲や中国政府を批判する投稿の削除が話題になっている。
さらに、世界のドローン市場をリードする「DJI」にも疑惑の目が向けられている。中国メーカーのDJIのドローンが、米国に安全保障上の危機をもたらすとの見方が浮上している。
米中の貿易摩擦の高まりの中で、中国のテック企業に向けられる目はさらに厳しさを増していくだろう。その結果、イノベーションの進化が止まってしまうことが懸念される。
現代において、イノベーションは国家の枠に閉ざされるべきものではない。世界の国々が発展するにつれて、様々な技術革新は起こってきた。米国と中国という2つの大国が、互いに影響を及ぼし合う中で、テクノロジーの進化が生まれてきた。
今日のテクノロジーの発展が生まれた背景には、米中のコラボレーションがあった。しかし、今や2つの市場は分裂に向かおうとしている。ここから起こり得るのは、イノベーションの進化が停滞してしまう危険だ。企業や消費者は結果的に、これまでより高いコストに直面することになる。