また、国内の資金調達額は過去最高を記録するなど伸びている一方で、世界経済フォーラム(WEF)のイノベーションランキングでは後退を続け、2018年時点で9位。内閣府発表の「国際競争力レポートにおけるイノベーションランキングの現状の分析について」では、日本は研究開発の成果を社会的価値につなげる力やオープン・イノベーションに対する力が不足している、と分析されている。
悲観的なデータが多く並ぶ日本。だが海部は、「日本は大きなポテンシャルがある。ランキングが下がってきている“今”だからこそ、チャレンジすべきではないか」と言う。
そんな海部と同じ思いを持っていたのが、代表取締役CDOの大山よしたかだった。海部と10年来の知人である大山は、過去に一緒にプロジェクトを手がけたこともある。電通のアートディレクターを経て、宇宙開発ベンチャー「SPACE WALKER」のCEOを務めていたが、海部とともにBOLD設立を決断した。
「SPACE WALKERで有人宇宙飛行のプロジェクトを進めている際、技術を知ってもらい接点を作るとお金が集まり、社会が動くということに気づきました、専門的なスキルを持ったプロフェッショナルな集団と組めば、日本が世界に誇るべき技術を社会に実装できるのではないか。また、資金調達回りをしているときに、いろんな企業から『こんな技術がある』『こんなことができないか?』と声をかけてもらうことも多く、これはメンバーを集めたら面白いことができるのではないかと思い、海部と一緒にプロフェッショナル・ギルド集団をつくることにしたんです」(大山)
“クリエイティブ畑”の2人から始まった、BOLDのアイデア。しかし彼らだけでは、どうしてもクリエイティブな支援の方向に偏ってしまう──そんな懸念から、3人目の代表取締役として白羽の矢が立ったのが、川名麻耶だった。
彼女はゴールドマン・サックス証券投資銀行部門、ビジネス・ブレークスルーを経て、2017年にカントリーマネージャーとして米国AIユニコーンベンチャーの日本法人立ち上げに携わった経験を持つ人物。育児が落ち着き、次なるチャレンジを模索していたタイミングで海部と大山から声がかかり、BOLDへの参画を決めた。
この3人のほかに、ライトパブリシティ常務の朝倉道宏、Yahoo知恵袋などを生んだ國友尚、日テレアックスオンの藤田信太郎の3人の取締役を迎え、BOLDが動き出すことになった──。
クリエイティブだけでなく事業開発もできるのが強み
BOLDは金融出身の川名麻耶がCEO、ブランディング出身の大山よしたかがCDO、海部洋がCOOという構成で代表を務め、ブランディング、事業投資、事業開発の3つの軸で、事業成長に不可欠な「ヒト・モノ・カネ・アイデア」を投資し、企業、事業価値の最大化を目指していく。
ブランディング領域においてはコンセプトやストーリーの開発、事業投資の領域においてはBOLD内に個人投資家ギルド「BILD」を組成し、資金投資実行や投資家・VCとのマッチングを行う。そして事業開発の領域においてはCDOハンズオン(派遣)やJV(ジョイントベンチャー)を設立し、継続的な事業開発のスキームを提供する。