離婚後は、子どもが1週間ごとに均等に父親と母親のもとで暮らすのが理想とされている。必然的に子どもにかかる費用も折半されるので、養育費など現金のやりとりはほぼない。
父親が離れて住んでいる場合には、平日は母親の家、週末だけ父親の家というパターンもあるだろう。母親が海外在住という場合には、普段は父親と暮らし、夏休みの間は母親と一緒に生活するというケースもある。その際には、どちらか一方に金銭的な負担がかかることのないように調整するようだ。
スウェーデンの「ゼロ・ジェンダーバイアス」を感じる一コマ。ジンジャーハウス作りに励む父親たちと、自分が不在のときのために娘にエスプレッソの淹れ方を指導する父親(久山氏夫)
レシピの「麺棒で30cm角」はメジャーできっちり?
スウェーデンには、「妻だから」「夫だから」という、いわゆる「ジェンダーロール」があまりない。それは、家庭内の家事分担にも見られる。男女の得手不得手があるので、お互いの得意なものをやればいいという考え方がどうやら徹底しているようだ。
たとえば久山家では、肉料理は夫の仕事だ。久山氏(妻)は肉を触ったり、ハンバーグにするひき肉をこねたりする一連の作業があまり好きではないことがその理由だという。夏になると週5のペースでバーベキューディナーを行なうが、火起こしから肉の焼き方、片づけまでの一通りの仕事はすべて夫の担当だ。
朝のエスプレッソも夫が淹れる。ガジェット好きな夫は道具にこだわり、コーヒー豆を挽くミルからエスプレッソに入れるミルクの温度をきっちり60度にするために放射温度計まで揃えた。「そんなに律儀に温度を計らなくてもいいのでは? と思いますが、本人が楽しんでやってくれるならいいですよね」と久山氏は笑う。「料理への向かい合い方に滲み出る男女差、そんな発見があって面白いです」
ミルクの温度を測る放射式温度計
週末は父と娘のふたりで、スウェーデン名物のシナモンロールを焼くこともあるそうだ。レシピに「麺棒で30センチ角の長さに伸ばします」と書かれていると、おもむろに大工道具の中からメジャーを探し出し、きっちり30センチ四方に仕上げるという。
久山氏(夫)がメジャーで生地を30センチ角に測って作ったシナモンロール
一方、洗濯は妻の仕事。夫は「濡れた洗濯物を触るのが気持ち悪いから苦手」なのだそう。「得意なもの、好きなほうをやる」という観点から家の仕事をチョイスしているようだ。